- 防災の三助(自助・共助・公助)
- 災害発生時における防災の三助の具体例
「自助」「共助」「公助」は、地域包括ケアや社会保障分野で用いられる用語ですが、近年は、防災分野でも「自助、共助、公助で備える」ことの重要性が指摘されています。
防災の三助は、単体ではなく3つがバランスよく有機的に連携することが重要ですが、具体的な方法がイメージしにくい人が少なくありません。
この記事では、防災の三助(自助・共助・公助)の意味と、災害発生時の具体例について解説します。
防災の三助(自助・共助・公助)の意味とは
防災の三助とは、災害による被害を最小限にできる社会を実現するために必要な防災上の取組みです。
自助(じじょ)共助(きょうじょ)、公助(こうじょ)をまとめて防災の三助(さんじょ)と呼ぶのが一般的です。
自助・共助・公助の意味と関係性
自助、共助、公助の意味は、以下のとおりです。
防災の三助 | 意味 |
自助 | 自分と家族の命や財産を守るために、自ら防災に取り組むこと 「自分の身は自分で守る」 |
共助 | 近隣住民や被災者と互いに助け合うこと 「被災者同士で助け合う」 |
公助 | 行政による公的な支援のこと 「行政の支援を受ける」 |
自助は自分1人または家族という小さな単位、共助は家族とその周辺の人を含む中くらいの単位、公助は行政という大きな単位における防災対策です。
災害による被害を最小限に抑えるには、自ら災害に備えたり行動したりするだけでは不十分で、周囲の人と互いに助け合い、公的な支援を受けることが必要不可欠です。
つまり、自助、共助、公助を有機的に連携させた防災対策が重要であるということです。
出典:防災情報のページ‐内閣府
自助・共助・公助の起源は幕藩体制下に遡る
現在、自助・共助・公助は防災以外の分野でも用いられていますが、一説では、その起源は江戸時代まで遡ります。
この説では、出羽国米沢藩(現在の秋田県や山形県周辺)の藩主上杉鷹山が、財政破綻した藩の立て直しのために自助・互助・扶助の「三助の実践」を提唱したことが始まりだといわれています。
三助の意味や連携の重要性は現在と大差ありませんが、当時は共助が互助(近隣住民や地域が助け合うこと)、公助が扶助(藩が助けること)と呼ばれていました。
その後、様々な分野で三助の重要性が提唱され、現在は防災や地域包括ケア・社会福祉などの分野で主に用いられています。
地域包括ケアでは、自助・共助・公助に「互助」を加えて四助という概念が用いられる機会が多くなっています。
自助・共助・公助の対策に関する意識調査
平成30年版防災白書には、「自助、共助、公助の対策に関する意識」の調査結果が掲載されています。
出典:防災情報のページ‐内閣府
調査結果からは、2002年(平成14年)から2017年(2017年)の間に、共助または自助に重点を置いた対応をすべきと考える人が増加していることが分かります。
自助とは何か
自助とは、「自分の身は自分で守る」という考えに基づいて、自分や家族の命と財産を守るために、平時から災害に備え、災害発生時に適切に行動することです。
災害発生時には、周囲の人は自分やその家族のことで精いっぱいですし、行政が本格的に被災者支援に動き出すまでには時間がかかります。
したがって、災害発生直後から自分や家族の命を守るためには、共助や公助を待つのではなく自分で判断して行動しなければなりません。
また、災害発生時に迅速かつ適切に命を守る行動をするためには、平時から災害の発生を想定して備えておく必要があります。
自助防災の取組み
自助防災の取組みとしては、以下のようなことを挙げることができます。
- 防災グッズのセットを準備(防災ポーチ、非常用持ち出し袋、防災備蓄品)
- ローリングストック法の実践
- 自宅の耐震化や耐火対策
- 自宅内の安全確保(転倒・落下・移動のおそれがある物を固定、ガラスに飛散防止フィルムを貼りつけるなど)
- 家族で避難経路や避難場所(合流場所)、安否確認方法などを確認
平時からこれらの自助防災ができていれば、災害が発生しても「ちゃんと備えている」という自信があるので、必要以上に慌てることがありません。
また、必要以上に共助や公助に頼ろうとせず、自分で状況を確認しながら適切かつ迅速な判断を下しやすくなります。
ローリングストック法:災害発生時に備え、食料品や日用品について平時から少し多めに購入し、使った分だけ買い足す習慣をつけることによって、常に一定量を備蓄しておく備え方
共助とは何か
共助とは、災害の被害を最小限に抑えるために、近隣住民や地域の人と互いに助け合うことです。
災害発生時、まず行うべきは自分と家族の安全確保ですが、その後は、周囲の人と助け合いながら行動することが安全性を高め、生活の安定をもたらします。
災害発生時に最も多くの被害が出るのは発生直後の短い時間です。
しかし、大規模災害が発生した場合、行政が本格的に災害対応を始めるまでに時間がかかるので、共助が重要な意味を持つことになります。
災害発生時に円滑な共助防災を行うためには、平時から近隣住民や地域の人と関わり、良好な関係を築いておくことが重要です。
共助防災の取組み
平時から行っておきたい共助防災の取組みは、以下のとおりです。
- 近隣住民とのコミュニケーション(挨拶や日常会話など)
- 地域の防災訓練への参加(防災訓練、シェイクアウト、防災図上訓練など)
- 地域行事への参加(町内会、お祭り、ボランティア活動、子どもの見守りなど)
- 地域内の役割分担を避けずに行う(自治会役員など)
- 高齢者や障害者の支援など
災害発生時に共助がうまく機能するかどうかは、平時に周囲の人と良好な関係性が築けているかどうかにかかっています。
基本的に、困っている人が「全く知らない人」や「関わりが少ない人」の場合よりも、「ご近所付き合いのある人」の方が援助活動をとりやすいものです。
仲良くなろうと無理をする必要はありませんが、少なくとも、近所の人と顔を合わせたらあいさつをし、地域の役割や行事は嫌がらずに負担・参加しておきましょう。
公助とは何か
公助とは、行政による公的な支援です。
自助や共助は一般市民が行う防災であり、できることは限られています。
大規模発生時には、消防、警察、自衛隊、市区町村役場などの公的機関が、個人では対応できない支援を行います。
例えば、被災者の救助や救護、指定避難所の設営や運営、各種手続きなど災害応急対応、災害復旧・復興に関する対応などが行われることになります。
平時から災害に備え、災害発生時に迅速かつ適切な対応ができるような制度や仕組みを構築しておくことも公助の一つです。
公助防災の取組み
公助防災の取組みは多岐にわたりますが、一般的には以下のような取り組みが行われています。
- 地域防災計画の作成
- 防災マニュアルの作成
- ハザードマップの作成と公開
- 指定緊急避難場所や指定避難所の指定・整備
- 食料や飲料水など生活物資の備蓄
- 災害発生時に使用する資器材の整備と保管
- 民間企業や他地域の市区町村との応援協定
- 都道府県DMAT(災害派遣医療チーム)の編成、研修、訓練
- 防災関連情報伝達制度の充実(防災行政無線、メール、SNS、ウェブサイトの活用など)
- 市民講座などへの防災関連の出前講義
- 防災関連のパンフレット作成と交付
- 自主防災活動への補助金交付
- 防災訓練の実施
ただし、これらの備えをしていても、大規模災害発生時に実践できる公助には限界があります。
例えば、阪神・淡路大震災発生時、被災者は30万人以上に上りましたが、地震当日に対応できる自衛隊員は約8000人しかいない状況でした。
また、大地震などの影響で交通手段に被害が出た場合、支援物資の供給が滞り、救助や救護を行う人員の派遣も遅れます。
したがって、公助の機能充実は常に検討・実施されるべきですが、災害による被害を最小限に抑えるには自助や共助の機能強化が必要です。
まとめ
防災の三助(自助・共助・公助)は、日本における防災の基本的な考え方です。
政府は、公助には限界があり、自助と共助の量と質を向上させることが防災対策として重要であると明言しており、今後もその傾向は続くと考えられます。
できることからコツコツとで構わないので、平時のうちから災害への備えをしておきましょう。
【参考】