- 応急危険度判定士とは
- 資格認定講習の受講資格と難易度
- 更新の方法
大規模地震が発生すると、被災地にある建物も大きな被害を受けることになります。
被害の程度は建物によって異なり、完全に倒壊することもあれば、外壁が崩れる、外壁がひび割れる、全体が少し傾くなど様々です。
被災者にとって最大の関心は、「被災した建物に住み続けられるかどうか」ですが、住み続けられるのかどうかの判断が素人には難しいものです。
そこで、被災した建物の危険度を判定する「被災建築物応急危険度判定」という制度が設けられており、その制度下で判定を行うのが応急危険度判定士です。
この記事では、応急危険度判定士の活動内容、資格要件、資格認定講習の内容、資格更新の方法について解説します。
応急危険度判定士とは
応急危険度判定士とは、地震発生後に被災地の建築物の危険度を判定する「被災建築物応急危険度判定」に基づく資格であり、その有資格者を指す言葉です。
2014年時点で全国に10万人を超えており、現在はさらに増加しています。
被災建築物応急危険度判定とは
被災建築物応急危険度判定とは、地震発生時、被災した建築物の危険度の情報提供や二次災害の防止などを目的として、余震などによる倒壊、落下物・転倒物などの危険性を判定する制度です。
この判定を行うのが、応急危険判定士です。
地震の影響で傾いたり損傷したりした家屋の危険度を応急的に判定することで、居住者が避難生活を決断したり、通行人が倒壊の危険を回避したりできるようになります。
応急危険度判定士の資格
応急危険度判定士は、都道府県が認定する資格です。
被災建築物応急危険度判定の活動を行うには、建築士などの有資格者が各都道府県主催の応急危険度判定士認定講習会を受講し、都道府県知事に認定申請を行う必要があります。
受講資格や講習会の内容は都道府県によって多少の違いがあるので、ここでは一般的な内容を示しておきます。
受講資格
認定を希望する都道府県に住んでおり、以下のいずれかの資格を有している必要があります。
- 建築士(一級 / 二級 / 木造)
- 建築基準適合判定資格者
- 官公庁の建築技術職員で建築行政等の実務経験を一定年数以上有する者
- 地方独立行政法人の建築に係る研究職員で震災建築物調査等の実務経験を一定年数以上有する者
応急危険度判定士認定講習会
応急危険度判定士認定講習会は、都道府県ごとに実施されており、実施場所や回数などは地域によってバラバラです。
必要書類と主な講習内容は、以下のとおりです。
必要書類
- 応急危険度判定士認定講習会受講申込書
- 資格証などのコピー
- 受講票
- 費用:無料
講習内容
- 耐震関係の動向
- 応急危険度判定マニュアルの内容
- 応急危険度判定士認定申請手続き
建物の耐震構造や制度に関する動向や、応急危険度判定の基本的な方法についての講習が行われます。
講習時間は地域によって差がありますが、2~3時間程度のことが多くなっています。
講習受講後の手続き
講習修了後、受講者が都道府県知事に認定申請を行います。
都道府県知事によって登録されると、その都道府県の応急危険度判定士として認定されます。
また、認定を受けた人には「被災建築物応急危険度判定士認定証」が交付されることになります。
難易度
応急危険度判定士になるための条件は、一定の資格を所持していることと講習修了です。
資格さえ所持していれば、講習を受講して認定申請を行えばほぼ100%認定されるので、有資格者にとっては難易度は低いと言えます。
資格の更新
応急危険度判定士認定証の有効期間は5年間です。
有効期間満了年度の前年度から期限までの間に改めて講習を受講して認定の申請を行うことにより、資格を更新できる仕組みとなっています。
認定後に転居した場合
ある都道府県で応急危険度判定士に認定された後、他の都道府県に転居した場合、転居先の都道府県知事に認定申請を行うことによって資格が認定されます。
したがって、更新期限前であれば、転居後に改めて講習会に参加する必要はありません。
認定事項の変更・再交付・辞退
氏名、建築士免許の変更、住所、勤務先、緊急連絡先など認定証の内容が変更になった場合、届出を行う必要があります。
認定証を紛失または汚したときも、再交付の申請を行わなければなりません。
認定された後に健康を害するなどの事情で認定を辞退する場合、応急危険度判定士認定辞退届を提出することになります。
応急危険度判定士の活動が困難になったにも関わらず認定を辞退しないままだと、地震発生時に要請が届き、その都度、活動できない旨を伝える手間がかかります。
応急危険度判定士の活動内容
応急危険度判定士は、地震発生後の二次災害から人命を守るという重要な役割を担いますが、原則として、その活動はボランティアです。
被災した市町村に設置された災害対策本部からの要請を受けて被災地へ派遣され、被災建築物の応急危険度判定を行います。
原則として、被災地内では応急危険度判定士が2人1組で行動し、担当エリアの被災建築物の外観または外観および内観の目視により、危険度を判定します。
判定には被災建築物応急危険度判定調査票が用いられ、票記載の各項目が一つひとつチェックされ、最後に「調査済」、「要注意」、「危険」のいずれかの総合判定が決められます。
判定後は、総合判定の結果に基づいて「調査済(緑)」、「要注意(黄)」、「危険(赤)」と記載された紙を建築物の見やすい箇所に掲示し、居住者や一般市民が建築物の状況を一目で確認できるようにしておきます。
まとめ
応急危険度判定士は、ボランティアで被災した建物の危険度を判定する活動を行います。
被災者にとって、自宅で安全に住み続けられるのかどうかは非常に重要ですが、自分で判断することは困難です。
そのため、災害発生後、応急危険度判定が実施されることには大きな意味があり、応急危険度判定士の活躍には大きな期待が寄せられています。