- 火山噴火による火山現象(災害)の種類
- 各火山現象の特徴と違い
火山が噴火すると、噴石、火山灰、溶岩流、火砕流など様々な火山現象が発生し、周辺地域に甚大な被害をもたらします。
火山現象にはそれぞれ特徴があるので、防災の観点からは基本的な特徴くらいは押さえておきたいところです。
この記事では、火山噴火に伴って災害を発生させる火山現象の種類と違いについて解説します。
火山噴火による火山現象(災害)の種類
火山の噴火に伴って災害を引き起こす代表的な火山現象は、以下の5つです。
- 噴石
- 火山灰
- 溶岩流
- 火砕流
- 泥流
以下、火山現象について一つひとつ解説していきます。
火山現象:噴石
噴石とは、火山の噴火によって火口から噴出する固形物のうち、火山灰と溶岩以外のものをまとめた呼び名です。
噴石は、大きさによって大きな噴石(火山岩塊)と小さな噴石(火山礫)に分類されます。
また、火山灰も火山噴火によって火口から噴出しますが、大きさの違いで噴石と区別されています。
種類 | 大きさ | |
噴石 | 大きな噴石 | 粒径64mm以上 |
小さな噴石 | 粒径2mm~64mm未満 | |
火山灰 | 粒径2mm未満 |
大きな噴石
大きな噴石は、粒径が64mm以上で、火口から約2~4kmの範囲に降り注ぎます。
爆発的な噴火に伴って火口から噴出して、風の影響を受けずに弾道を描いて飛び、登山者や建物に激突するリスクがあります。
噴石の大きさや形によっては、屋根を突き破ったり、道路をへこませたりすることもあり、人に当たると大ケガをしたり命を落としたりします。
小さな噴石
小さな噴石は、粒径2mm~64mmと小さく、1つ1つの破壊力は小さいですが、風に乗って火口から10km以上も遠方に飛ぶので、被害が広範囲に及びます。
小さいとはいえ、人、建物、土地、道路、電車、車などに当たると大きな被害をもたらし、人に当たると部位によっては命を落とします。
火口から離れた市街地などにも被害をもたらすので、大きな噴石よりも私たちの日常生活に及ぼす影響が大きいものです。
火山現象:火山灰
火山灰とは、火山の噴火によって噴出される固形物のうち、直系が2mm以下のものです。
火山灰は、風に乗って数十kmから数百km以上も遠方に降り注ぐこともあり、交通麻痺、農作物への被害、ライフラインなどへの影響を広範囲に及ぼします。
また、目、鼻、喉、気管支などに火山灰が入ると、痛みやかゆみ、呼吸器疾患などの健康被害をもたらします。
「灰くらい、大したことはない。」と思っている人がいます。
特に、降灰がない地域に住んでいる人は、火山灰の影響を過小評価する傾向があります。
確かに、火山灰は、噴石、溶岩流、火砕流などの他の火山活動のようにすぐ命を落とすことはありません。
しかし、木や紙を燃やしてできる灰とは違い、私たちの生活を脅かす現象です。
気象庁も、火山灰による被害の大きさや防災対策の重要性を考慮し、噴火警報とは別に「降灰予報」という予報を設定していることからも危険性が分かるでしょう。
私たちの日常生活に被害をもたらす現象であると認識しておかないと、降灰被害に遭ってから強く後悔することになります。
噴石と火山灰の違い
噴石と火山灰の違いは、1粒の大きさです。
大きな噴石が粒径64mm以上、小さな噴石が粒径2mm~64mm未満、火山灰が粒径2mm未満です。
火山現象:溶岩流
溶岩流とは、火口から噴出したマグマが、液体のまま地表へ流れ下りる火山現象です。
溶岩流の温度は、成分によって違います。
玄武岩質で1050~1200℃、安山岩質で1000~1100℃程度です。
しかし、いずれにしても高温なので、建物、農地、森林、人、車などの上を溶岩流が通過すると、焼失するか冷え固まった溶岩の下に埋没します。
流れる速さは、玄武岩質の溶岩流で最高時速10kmを超えることがありますが、通常は人の歩く速さより遅いことが多く、目視してから避難することは可能です。
ただし、地形によって流れる速さが大きく変化するので、事前に避難しておくことが大切になります。
火山現象:火砕流
火砕流とは、火山噴火に伴う土砂移動現象の一つで、噴出した高温の岩塊や火山灰などと気体(空気や水蒸気など)が混ざった状態で山の斜面を流れる現象です。
火砕流の温度は数百℃から1000℃近く、火砕流が流れた地域の建物、農地、森林、人、車などは焼失または埋没します。
溶岩流と比較して流れ下りるスピードが速く、時速数十kmから100kmを超える場合もあります。
つまり、火砕流が迫ってから徒歩で避難することは困難で、事前に噴火警報などを確認し、適切な時期に避難しなければなりません。
火砕流と溶岩流の違い
火砕流も溶岩流も、流れた地域が焼失または埋没して大きな被害を受けるところは共通しています。
しかし、溶岩流は、マグマが液体のまま地表へ流れ下りる現象ですが、火砕流は、火山噴火で噴出した固形物と気体が流れる現象で、成分が異なります。
また、温度は溶岩流の方が高く、流れる速さは火砕流の方が速いという違いもあります。
融雪型火山泥流
融雪型火山泥流とは、積雪期における火山噴火に伴う火砕流などにより、山の斜面の雪が融けて大量の水が発生し、土砂や岩石を飲み込んで斜面を流れ下りる現象です。
融雪型火山泥流は、スピードが時速約60kmと速い上に、遠方まで流れて広範囲の建物、農地、道路などを埋没させる被害をもたらします。
積雪が多く、活火山が近くにある地域で生活している場合は、特に注意が必要です。
火砕流と同様、融雪型火山泥流が迫ってから避難しても逃れることは困難であり、事前に避難しておく必要があります。
火山ガス
火山ガスとは、火山の火口や噴火口から出る火山噴出物のうち、マグマに溶けていた水蒸気、二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などの気体が放出される現象です。
毒性を持つ成分、酸欠に陥る、高熱などが人体に悪影響を及ぼすおそれがあります。
火山ガスは、必ずしも火山噴火に伴って生じるとは限らず、恒常的または間歇的に火山ガスを噴出するが噴火はしないという火山も少なくありません。
気象庁は、火山ガス予報という予報を設定しています。
火山ガス予報は、火山噴火に伴って有毒の火山ガスが放出された場合に、火山ガス濃度が高くなると予想される地域を知らせる予報です。
噴火警報や噴火予報とは別に発表されるので、こまめに確認して避難の要否を検討することになります。
土石流や泥流
火山噴火によって噴出した噴石や火山灰が堆積した地域では、雨が降ると土石流や泥流が発生するリスクが高いものです。
大雨でなく数mm程度の雨であっても土石流や泥流が発生するおそれがあるので、注意が必要です。
土石流や泥流は高速で斜面を流れ下り、下流地域に大きな被害をもたらします。
火山噴火に備えるための情報
火山噴火に伴う火山現象は、いずれも大きな被害をもたらします。
被害を最小限に抑えるには、事前に火山噴火に関する情報を入手し、適切な時期に適切な方法で避難することが大切です。
気象庁は、火山噴火やそれに伴う火山現象について様々な情報を発表しています。
気象庁が火山噴火などに関して発表している主な情報は、以下のとおりです。
噴火警報・予報 | 火山噴火に伴う諸現象による被害を抑えるために発表される |
火山の状況に関する解説情報 | 火山活動が活発な場合などに、観測情報を踏まえて注意事項や警戒事項を説明 |
火山活動説明資料 | 火山活動の状況や警戒事項について、定期または臨時に解説 |
降灰予報 | 火山噴火により広範囲に火山灰が降ることが予測される場合に発表される |
火山ガス予報 | 火山噴火によって有毒の火山ガスが放出され、火山ガス濃度が高まると予想される地域に発表される |
まとめ
火山の噴火は様々な火山現象をもたらしますが、各火山ごとに起こりやすい現象とそうでない現象があります。
自分が住んでいる地域の活火山の場所や過去の活動・被害を確認し、どのような火山現象が起こる可能性があり、どのような被害が想定されるのか確認しておきましょう。
【参考】