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災害対策基本法とは?特徴の解説と改正が繰り返される理由

災害対策基本法

この記事で分かること
  • 災害対策基本法とはどのような法律か
  • 災害対策基本法の特徴
  • 災害対策基本法の改正

防災に取り組む場合、まずは住んでいる国や地域の防災関連法や制度を確認するのが基本です。

個人の防災対策は、行政の防災対策の影響を少なからず受けますし、行政の防災対策は防災関連法に基づいて規定されているからです。

日本では、災害対策基本法という法律に基づいて様々な災害対策が行われており、この法律の考え方や内容を理解しておくことが重要になります。

この記事では、災害対策基本法の概要、法律の特徴、改正が繰り返される理由について解説します。

災害対策基本法とは

災害対策基本法とは、日本国民の生命・身体・財産を災害から保護することにより、社会秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする法律です。

災害対策基本法第1条では、法律の目的が規定されています。

この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。

引用:災害対策基本法第1条

第2条第1項及び第2項では、災害や防災の意義が規定されています。

項目説明
災害

(第1項)

暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害
防災

(第2項)

災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ること

また、第7項から第10項には、防災計画、防災基本計画、防災業務計画、地域防災計画の意義がそれぞれ定められています。

制定の経緯

災害対策基本法は、伊勢湾台風をきっかけとして制定されました。

伊勢湾台風とは、1959年9月26日に潮岬に上陸し、紀伊半島から東海地方の4件(和歌山県、奈良県、三重県、愛知県)を中心として甚大な人的・物的被害や経済的ダメージをもたらした台風です。

昭和の3大台風の一つとされ、以下のような被害をもたらしました。

項目被害
人的被害死者:4697人

行方不明者:401人

不詳者:38921人

被災者合計:約153万人

物的被害全壊家屋:36135棟

半壊家屋:113052棟

流失家屋:4703棟

床上浸水:157858棟

船舶被害:13759隻など

伊勢湾台風で問題視されたのは、進路予想がほぼ正確で、早期から上陸が確実視されており、充分な災害対策を講じる時間的余裕があったにも関わらず、甚大な被害が発生したことです。

当時は、災害が発生する度に関連する法律が制定されており、他の法律との整合性が十分に考慮されず、防災行政が十分に機能していませんでした。

例えば、伊勢湾台風では、気象台の高潮予想の甘さ、低い堤防、地盤沈下対策の不備、行政による適切かつ迅速な災害情報伝達・避難誘導・防災体制などの不十分さ、それに伴う住民の台風への認識の甘さ、停電対策不足などの問題が指摘されました。

そこで、行政の防災体制の不備を改善し、災害対策全体を体系化することにより、総合的・計画的な防災行政の整備・推進を図るために、災害対策基本法が制定されたのです。

災害対策基本法の特徴

災害対策基本法の特徴について、個別に解説していきます。

防災に関する責務を明確化している

災害発生時に、各機関や住民が果たすべき責務が明確化されています。

対象責務
国、都道府県、市区町村、指定公共機関など防災に関する計画の作成と実施、他機関との相互協力など
住民など災害への自発的な備え、防災活動への自発的な参加など

責任が明確化されることにより、各機関や住民が自発的に防災に取り組むことが期待されています。

総合的防災体制の整備推進

防災の効果を高めるには、各行政機関が個別に防災に取り組むのではなく、一体となって総合的な防災体制を整備・推進し、その中で各機関が自分の責任や役割を果たすことが重要だとされています。

そこで、国と都道府県に、防災活動の組織化や計画化を図るための機関を整備することが規定されています。

対象機関
中央防災会議、非常災害対策本部
都道府県・市区町村地方防災会議、災害対策本部

計画的防災計画の整備・推進

目の前で発生した災害に無計画に対応するのではなく、平時から計画的に防災計画を整備・推進することとされています。

この方針に基づいて、国は、防災に関する最高の意思決定機関である中央防災会議において「防災基本計画(政府の災害対策に関する長期的かつ総合的な計画)を策定します。

また、指定行政機関などが防災業務計画を、地方自治体が「地域防災計画」を策定し、重点を置くべき事項を明確にしています。

機関策定するもの
中央防災会議防災基本計画
指定行政機関・指定公共機関防災業務計画
都道府県、市区町村地域防災計画

災害対策の推進

災害対策として、災害予防、災害応急対策、災害復旧という段階を規定し、各段階ごとに実施責任主体と果たす役割や権限を規定しています。

これにより、防災に関する責務が明確化され、各機関が責任を負いながら付与された権限を行使することになります。

また、果たすべき役割や責任に応じて、一定の権限が各機関に付与されます。

例えば、市区町村長に避難指示発令、警戒区域の設定などの権限が付与されています。

実施責任者負担が原則

防災にかかる費用については、原則として、実施責任者の負担とされています。

ただし、巨大地震などの激甚な災害については、法律に基づいて他機関からの援助などが行われます。

例えば、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律では、激甚災害のあった地方公共団体に対して、国が通常を超えた特別の財政援助や助成を行うことが規定されています。

災害緊急事態への対応

災害対策基本法では、巨大地震などの非常災害が発生し、それが国の経済と公共の福祉に重大な影響を及ぼすレベルである場合、内閣総理大臣が災害緊急事態の布告を発することができると規定されています。

災害緊急事態の布告が発せられると、緊急災害対策本部が設置され、生活必需物資の配給制限などの緊急措置がとられます。

災害対策基本法の改正

災害対策基本法は、法律の内容を実態に即したものにすることで災害対策の強化を図るために、大規模災害の発生後などに繰り返し改正が行われています。

例えば、1995年1月17日の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)後の法改正では、ボランティアや自主防災組織の活動環境整備や、緊急災害対策本部設置要件の緩和、自衛隊の災害派遣要請の法定化などが盛り込まれました。

また、2011年3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)後は、大規模災害の広域対応、地域防災力の向上、被害者支援充実などを盛り込んだ法改正が行われています。

2014年の改正では、災害発生後に放置された車両を道路管理者が強制移動できることなどが盛り込まれました。

いずれも、改正前に発生した大規模災害であらわになった問題を改善する内容となっています。

つまり、大規模発生後に防災行政の振り返りを行い、専門家などなどから指摘された不備不足の改善案を法律に落とし込む目的で改正が繰り返されているのです。

まとめ

個人で防災対策をするには、災害対策基本法について知り、行政の方針や対策を把握した上で、不足する部分を各自で補うという備え方が基本です。

災害対策基本法は、難解な表現が多く、条文を流し読みしても理解しにくいので、最低限、この記事に書かれた内容を覚えておくようにしましょう。

【参考】