- 火山灰の意味
- 火山灰の影響・被害
- 火山灰の防災対策
災害を引き起こす火山現象には、噴石、火砕流、溶岩流、泥流、火山ガスなど様々な種類があり、火山灰もその一つです。
火山灰は、噴火で噴出する噴石と比較するとごく小さな粒子ですが、噴火の度に膨大な量が噴出されて風に乗って広範囲に降り注ぎ、大きな被害をもたらします。
この記事では、火山灰の意味(定義)、火山灰による影響や被害、火山灰から身を守る防災対策について解説します。
火山現象については、別の記事で詳しく解説しています。
火山灰とは
火山灰とは、火山の噴火によって噴出される固形物のうち直径2mm以下の破片です。
「火山の噴出物」で「直径2mm以下」のものをまとめて火山灰と呼んでおり、その中には火山ガラス、鉱物結晶、古い岩石の破片など複数の物質が含まれています。
火山「灰」と書きますが、その成分は、草木や紙などを燃やしてできる一般的な灰とは異なるのです。
日本における活火山の分布
2019年9月現在、日本には111の活火山があります。
出典:気象庁|活火山とは
近畿地方と四国地方を除く全国各地に活火山があることが分かります。
111の活火山うち50火山については、将来的に噴火して社会的影響を及ぼす可能性がある火山として「常時観測火山」に指定されており、24時間体制で常時観測・監視されています。
火山灰による影響と被害(健康被害)
火山灰は、私たちの生活にどのような影響や被害をもたらすのでしょうか。
火山灰の影響・被害:交通
降灰の影響で視界が悪化すると、車、バス、タクシー、バイク、電車、船、航空機などの運転や操縦に支障が出ますし、公共交通機関の運休や交通麻痺を招く原因ともなります。
火山灰が道路上に堆積するとスリップの原因となり、線路上に堆積すると車輪やでレールの導電不良によって信号や踏切に障害が生じます。
また、火山灰の粒子が車や電車のガラスを傷つけたり、航空機のエンジンに吸い込まれて故障の原因になったりするおそれもあります。
火山灰の影響・被害:ライフライン
火山灰がライフラインに与える影響・被害として大きいのが、停電です。
雨を含んだ火山灰が漏電を引き起こして送電設備が壊れたり、電線に堆積して断線させたりすることで停電が発生することがあるのです。
また、水道施設に火山灰が降り注ぐと、給水に影響が出ることもあります。
近年は、地震や台風などで頻繁に停電が発生していますが、降灰がある地域では、火山灰にも注意を払わなければなりません。
火山灰の影響・被害:日常生活と健康被害
堆積した火山灰の重みで屋根などが壊れる、太陽光パネルが火山灰で覆われて発電に支障が出る、車や衣服などに火山灰が付着するなどの影響があります。
例えば、店や商品に火山灰が積もる、火山灰が入り込んで機械類が故障する、停電・給水停止・交通麻痺などの影響で商品の供給に遅れや困難が生じる可能性があります。
また、火山灰の影響で水質が変化して魚などが死ぬ、農作物が育ちにくくなるなどの被害も発生します。
観光への影響も甚大です。
さらに深刻なのが、健康被害です。
目、鼻、喉、気管支などに異常が起きたり、呼吸器疾患を患ったりするなどの被害が発生します。
喘息持ちの人は症状が悪化し、命の危険にさらされることもあります。
火山灰の防災対策
火山灰は、私たちの健康や日常生活に大きな影響を与えるもので、その被害を最小限に抑えるには、適切な防災対策を知り、実践する必要があります。
降灰用の防災対策グッズを備える
火山灰による被害を最小限に抑えるには、他の災害と同じく事前の備えが大切です。
一般的な防災グッズに加え、降灰がある地域で備えておきたい防災グッズは、以下のとおりです。
- 防塵マスク
- ゴーグル(防護めがね)
- サランラップ
- 清掃用具(ほうき、掃除機、降灰用の袋、スコップなど)
防塵マスク
火山灰が降る地域で必ず備えておきたいのが、防塵マスクです。
火山灰を吸い込むと様々な健康被害が生じる可能性があるので、降灰中は必ず防塵マスクを装着してください。
市販の一般的なマスクでもないよりはマシですが、健康被害を防ぐという観点からは心もとないです。
火山灰が降る地域では、0次の備えとして防災ポーチに防塵マスクを入れ、常に持ち歩くのが基本です。
長年、火山灰が降る地域で住んでいる人には、当たり前な備えです。
しかし、転勤などで降灰のある地域に引っ越してきた人には、火山灰も防塵マスクも馴染みがなく、マスクなしで出歩いてしまうことが少なくありません。
ゴーグル(防護めがね)
火山灰には、火山ガラスや岩石の破片など尖った物が混じっており、目に入ると眼球が傷つく可能性があります。
そのため、降灰中はゴーグルを装着して目を守ることが大切です。
花粉対策用メガネで代用することもできますが、できれば本格的に目を守れるゴーグルを1つ備えておきたいところです。
サランラップ
降灰に慣れていない人は「なんでサランラップ」と思うでしょう。
しかし、頻繁に降灰被害を受けている地域では、火山灰対策といえばサランラップが欠かせません。
サランラップは、電化製品に火山灰が入り込んで故障するのを防ぐ役割があるので、必ず備えておきましょう。
清掃用具
ほうき、掃除機(交換用ごみ袋とフィルター)、ショベルなど、降り積もった火山灰を掃除するためのグッズも必要です。
火山灰が降る地域に住む場合は、一般的な防災グッズ(防災セット)に加えておきましょう。
降灰予報を確認する
降灰予報とは、火山の噴火に伴って広範囲に火山灰が降ると予想される場合に、気象庁が発表する予報です。
国内の全火山を対象として発表されるもので、気象庁が火山に関して発表する噴火警報・予報や噴火速報、火山ガス予報とは別の予報です。
降灰予報では、原則として、「噴火後に、降灰が予想される場所と降灰の量」が発表されます。
ただし、活動が活発化している火山については、「今日、噴火が起こった場合に予想される降灰の範囲」が発表され、噴火直後に「小さな噴石が降る範囲」も速報されることになっています。
降灰予報には3種類あります。
種類 | 説明 |
降灰予報 (定時) | 噴火の可能性が高い火山につき、18時間以内に噴火した場合の「降灰範囲」と「小さな噴石の落下範囲」を定期的に発表 |
降灰予報 (速報) | 噴火直後(5~10分程度)、1時間以内の「降灰量分布」や「小さな噴石の落下範囲」を発表 |
降灰予報 (詳細) | 噴火後(20~30分)、詳細な「降灰量分布」や「降灰開始時刻」を発表 |
降灰予報(定時)が発表された後は、こまめに降灰予報を確認し、今いる地域の危険度を把握して、具体的な火山灰の防災対策を検討してください。
防塵マスクを着用する
防災グッズのところで触れましたが、火山灰対策には防塵マスクが必要不可欠です。
火山灰は直径2mm以下と小さく、空気と一緒に体内に侵入して咳、鼻やのどの痛み、息苦しさなどの原因になります。
喘息や気管支炎があると、喘息発作や喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)、胸が苦しくなるなどの症状が現れることもあります。
そのため、火山灰が頻繁に降る地域で生活する場合は、普段から防災ポーチの中に防塵マスクを入れておき、降灰前に着用できるように備えておくことが大切です。
防塵マスクを備えていない場合は、降灰予報が発表された時点ですぐ購入しましょう。
肌の露出を減らす
火山灰が触れると皮膚が炎症を起こし、痛みや腫れなどの症状が現れることがあります。
降灰予報が発表されたら、帽子、上着、ストール、マフラーなどを着用し、できる限り肌の露出を減らします。
夏場で肌を隠す衣類などがない場合は、傘をさしたり安全な屋内に避難したりして降灰対策をしてください。
運転中は視程障害やスリップに注意
火山灰が降ると視界が悪くなって周囲の車、人、標識などが見えづらくなります。
また、路上に堆積した火山灰の影響で、道路上の表示が見えなくなったり、車がスリップしたりすることもあります。
車を運転中の場合、平時よりもスピードを落とし、周囲の状況を慎重に確認して運転する必要があります。
急ブレーキや急ハンドルは厳禁です。
目に入った火山灰はすぐ水で洗い流す
火山灰が目に入ると、目の痛みやかゆみ、充血、粘り気のある目やに、涙が止まらないなどの症状が出ます。
火山灰は微細な粒子ですが、その主成分はガラスや鉱物と同じで、尖っていることもあるので、眼球の表面が傷ついてしまうリスクもあります。
火山灰が目に入ったら十分に水で洗い流してください。
こすると眼球が傷つくおそれがあるので、かゆくても我慢して水を探してください。
普段からコンタクトレンズを使用している場合、目に入った火山灰の除去に手間がかかります。
目を傷つけるリスクも高くなるので、降灰が続いている間はゴーグル(防護めがね)を着用しましょう。
火山灰を除去する場合
自宅などに降り積もった火山灰を除去する場合も、健康被害のリスクに留意しなければなりません。
除去作業中は防塵マスクとゴーグルの着用を徹底し、火山灰が目や体内へ入るのを予防します。
コンタクトレンズの使用は控え、メガネを着用してください。
屋根など高所に堆積した火山灰を取り除く場合、安全面に配慮して必ず2人以上で除去作業を行うとともに、滑りやすい靴を履き、ヘルメット、安全帯、命綱を使用してください。
どうしても一人で作業する場合は、近隣住民に除去作業を行うことを伝え、携帯電話を常備して作業を行いましょう。
なお、火山灰は、下水などに詰まるので、流さずに自治体指定の袋に入れて所定の場所に出してください。
まとめ
火山灰は、私たちの身体に様々な悪影響を及ぼします。
「たかが灰だろう」と軽く考えていると、喘息や眼球損傷など深刻な被害を受ける可能性があるので、対策を徹底してください。
特に、降灰のない地域からある地域へ移り住んだ場合は、火山灰の影響を甘く考えがちなので注意が必要です。
【参考】
- 気象庁|活火山とは
- 気象庁|降灰予報の説明