- スマホ充電用のおすすめ防災グッズ
- 手回し充電器を使わない理由
スマホは、災害発生時の情報収集や安否確認などに役立ちますが、バッテリーがなくなると使えないという大きな弱点があります。
そのため、持ち歩き用防災セット(防災ポーチ)や持ち出し用防災セット、備蓄品にはスマホ充電用の防災グッズを備えておく必要があります。
被災者が備えていなくて困った防災グッズの第1位はモバイルバッテリー(充電器)です。
「充電用の防災グッズ=手回し充電器」をイメージする人が多いですが、避難所生活が長くなった場合はともかく、災害発生直後~約1日間の使用には向きません。
発電に時間と労力がかかり、心身の疲れからくる強いストレスを感じることになるからです。
驚くかもしれませんが、「充電用の防災グッズには手回し充電器以外を備える」ことが防災の基本です。
この記事では、スマホ充電用のおすすめ防災グッズと、手回し充電器を使わない理由について解説します。
日本では毎年、全国各地で停電が発生しています。
特に台風シーズンには断線や施設破損による大規模停電が頻繁に発生しており、停電対策として家庭用の充電器を備える人が急増しています。
停電時の充電に役立つのが「家庭用充電器」です。
大規模停電が発生した場合、電気が使えない状況で数日~数週間も生活せざるを得なくなる可能性があります。
停電期間が長引くと持ち歩き用の充電器ではまかないきれなくなるので、大容量の家庭用充電器を備えておくことが大切になります。
この商品は、容量の大きさや持ち運びできることから市区町村や企業が備えているものです。
最近は口コミで評判になり、一般家庭でも備え置くところが増えています。
防災セットに入れておく充電器より値は張りますが、長期間にわたって電気が使えない状況を回避するにはおすすめの商品です。
充電器を含む持ち出し用防災セットの中身については、別の記事で詳しく解説しています。
目次
防災グッズとして備える充電器の種類
一般家庭がスマホ充電用の防災グッズとして備える充電器には、大きく分けて5つの種類あります。
各充電器の特徴をまとめると、以下の表のとおりとなります。
種類 | 容量 | 充電速度 | 長期保管 | サイズ |
モバイルバッテリー | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
乾電池式充電器 | △ | △ | 〇 | △ |
手回し充電器 | ✕ | ✕ | 〇 | △ |
ソーラーパネル | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
水使用充電器 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ |
※モバイルバッテリーは充電式のもの(乾電池式を除く)
上の表では、各充電器の特徴を3段階(〇:優秀、△:普通、✕:不良)で評価しています。
それでは、各充電器を防災グッズとして備える場合のメリットとデメリットについて具体的に解説していきます。
モバイルバッテリーのメリット・デメリット
種類 | 容量 | 充電速度 | 長期保管 | サイズ |
モバイルバッテリー | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
モバイルバッテリーは、スマホ充電器の定番で、平時からスマホ充電用に常備している人も多い充電器です。
モバイルバッテリーのメリット
モバイルバッテリーのメリットは、容量の大きさ、充電速度の速さ、サイズのコンパクトさです。
容量の大きさ | 2回以上のフル充電が可能 |
充電速度 | 通常充電より20~30分早い |
サイズ | スマホと同じくらいのサイズ |
商品によって容量は異なりますが、スマホを2回以上フル充電できるタイプのモバイルバッテリーが増えており、中には3~4回フル充電できるタイプもあります。
急速充電機能が付いたモバイルバッテリーを使用すると、コンセントで充電するよりも20~30分早くフル充電できます。
「20~30分って、そんなに早くないな。」と思うかもしれませんが、他の充電器と比較すると格段に速いです。
スマホと同じくらいのサイズのモバイルバッテリーも販売されており、普段使いのカバンにも防災ポーチにも無理なく入ります。
モバイルバッテリーのデメリット
デメリットは、長期保管に向かないことです。
モバイルバッテリーは充電しないと使用できないので、充電した状態で防災セットに入れておくことになります。
しかし、フル充電しておいても時間の経過とともに自然放電し、バッテリー残量が減っていきます。
バッテリーの性能によりますが、リチウムイオン電池だと約1ヶ月で10%程度自然放電し、1年も経つとほとんど空になることがあります。
つまり、備えていたのに充電できないというリスクがあるのです。
モバイルバッテリーのおすすめ
防災ポーチに入れておくモバイルバッテリーを選ぶときは、以下の基準を参考にしてください。
- 出力(容量):10,000Ah以上
- 急速充電:可(2A以上)
- 大きさ:150×100mm以下
- 軽さ:200g以下
- 薄さ:20mm以下
- 同時充電:2台以上
- 安全対策:PSE認証あり
上記の基準をほぼ満たすのが、モバイルバッテリーの大手「アンカー」の薄型モバイルバッテリーです。
持ち出し用防災セットに備える場合、もう少しサイズが大きくても問題ありませんが、容量が大きく急速充電機能が付いたものを選びましょう。
また、家族のスマホを同時に充電したい場合は、同時充電ができるタイプを選ぶことも大切です。
軽めのモバイルバッテリーが増えていますが、それでもバッテリー容量が大きくなるほど重くなるので、容量と重さのバランスを考えて購入してください。
乾電池式充電器のメリット・デメリット
種類 | 容量 | 充電速度 | 長期保管 | サイズ |
乾電池式充電器 | △ | ✕ | 〇 | △ |
乾電池式充電器は、持ち出し用防災セットや備蓄品に備えておきたい充電器です。
乾電池式充電器のメリット
メリットは、長期保管が可能だということです。
充電器本体はもちろん、乾電池も自然放電が少ないので、長期にわたって保管しておくことができます。
乾電池は平時にも使用するので、ローリングストック法を実践すれば無駄や負担感なく備えておけます。
また、事前に充電しておく必要がなく、乾電池さえあればスマホ以外の電気機器の充電にも使えるので便利です。
例えば、ライト、ラジオ、時計などの防災グッズの充電に使うことが考えられます。
乾電池を多めに備えておくことで、災害発生時の各種機器の充電を乾電池式充電器一つで行うことができます。
乾電池は長期保管が可能ですが、永遠に保管できるわけではありません。
各電池メーカーが使用推奨期限(その期間内に使用を開始すれば電池は正常に作動し、JISに規定する持続時間等の性能を満足する期間(JISより引用))を設定しています。
期限を過ぎると液漏れや性能低下を招く可能性があり、充電器の故障の原因にもなりかねません。
乾電池本体または梱包に「月2桁-西暦年号(2019年6月の場合は06-2019)」で表示されているので、期限前に入れ替えてください。
また、高温な場所で保管すると、液漏れ、発熱、破裂のおそれがあります。
乾電池を高温な場所で保管するリスクについては、別の記事で詳しく解説しています。
乾電池式充電器のデメリット
デメリットは、フル充電が難しいことと、充電に時間がかかることです。
乾電池は容量が小さいので、市販のアルカリ乾電池を4本使用して充電できるのは50~70%程度で、フル充電するには電池を入れ替える必要があります。
充電時間も、平時にコンセントで充電するときの2倍程度はかかります。
スマホを1回フル充電するにはアルカリ乾電池が6~8本程度必要なので、多めに備えておきましょう:。
手回し充電器のメリット・デメリット(使わない理由)
種類 | 容量 | 充電速度 | 長期保管 | サイズ |
手回し充電器 | ✕ | ✕ | 〇 | △ |
防災グッズの定番と思われがちなのが、手回し充電器です。
手回し充電器のメリット
手回し充電器の最大のメリットは、本体で発電して充電ができるということです。
あらかじめ充電しておく必要も、乾電池を備えておく必要もなく、手回しをするだけで充電できるのです。
ダイナモ蓄電タイプの手回し充電器なら、発電した電気を本体に溜めておくこともできます。
自然放電することがなく、長期保管ができることもメリットです。
手回し充電器のデメリット
手回し充電器のデメリットは、充電するのに体力と時間がかかることです。
充電するには一定の速度で手回しを続ける必要があり、バッテリーが尽きたスマホを起動するには10分間程度、3~5分間通話するには1~2分間は手回しを続けなければなりません。
フル充電しようと思うと、何時間も回し続けることになります。
被災した直後の心も体も疲れ切っている状況で手回しを続けるのは、想像以上にしんどく、ストレスも溜まります。
手回し充電器は、発電するときに低い音を発します。
それほど大きな音ではありませんが、避難所の中で使用すると、周囲の人に不快感を与えてしまうおそれがあります。
手回し充電器を使わない理由
以上のとおり、手回し充電器は、充電に相当な体力と時間を費やすので、基本的には使用しません。
ただし、ラジオ、ライト、サイレン、ブザーなどの機能を搭載した商品が多く、充電以外の機能は優れている商品も少なくありません。
特に、防災メーカーが販売する防災セットに入っている手回し充電ラジオライトの多くは、多機能かつ高性能で使いやすいです。
そのため、充電器ではなくラジオやライトとして備え、充電機能は他の充電器が使えなくなったときの最終手段程度に考えておくのが無難です。
ソーラーパネルのメリット・デメリット
種類 | 容量 | 充電速度 | 長期保管 | サイズ |
ソーラーパネル | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
ソーラーパネル式充電器も、防災グッズとして注目されやすい充電器です。
ソーラーパネルのメリット
メリットは、晴れていればスマホをソーラーパネルにつなげて放置するだけで充電できることです。
電池を使う必要もなく、手回しをする必要もなく、放っておけば自然に充電されていきます。
また、モバイルバッテリーのように自然放電する心配もありません。
ソーラーパネルのデメリット
デメリットは、晴れていないと充電できないことです。
当然、屋内では発電できません。
発電力が弱く、日照時間によっては、日が昇ってから沈むまで屋外に設置しておいてもフル充電されないこともあります。
設置時は晴れていても、途中で曇りや雨になると発電できなくなりますし、雨の中に放置するとソーラーパネルもスマホも故障してしまうので、充電中はそばを離れにくいでしょう。
また、他の充電器と比べてサイズが大きいのもデメリットです。
手回し充電器やソーラーパネルが防災グッズとして注目されるのは、「本体さえあれば充電できる」というメリットが目立つからです。
しかし実際のところ、時間や体力が必要だったり、限られた条件下でしか充電できなかったりするというデメリットが大きいものです。
そして、被災したときはメリットよりもデメリットが目につき、ストレスを感じることになります。
水使用充電器
種類 | 容量 | 充電速度 | 長期保管 | サイズ |
水使用充電器 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ |
水を使って発電してスマホを充電するのが水使用充電器です。
現時点では、一般家庭用で実用できる水使用充電器は、藤倉コンポジットのアクアチャージくらいしか見当たらず、はっきりしたカテゴリー名も定まっていません。
しかし、そのメリットの多さを考慮すると、今度、他メーカーから販売される可能性は十分にあります。
スマホ充電用の防災グッズとしては新しいカテゴリーですが、持ち出し用防災セットや備蓄品に備えるメリットが大きいので紹介しておきます。
水使用充電器のメリット
メリットは、スマホをフル充電できる容量の大きさ、充電速度の速さ、長期保管できることです。
10,000Ahを超える容量でスマホ2台をフル充電することができ、充電にかかる時間も家庭用コンセントの充電と同じくらいで済みます。
長期保管しても劣化して性能が低下しないので、安心して備えておけます。
水使用充電器のデメリット
デメリットは、サイズです。
アクアチャージの場合、幅105mm×奥行き95mm×高さ104mmの直方体なので、防災リュックのサイズによっては奥行きがネックになります。
備蓄品として備えるなら問題はないでしょう。
水使用充電器のおすすめ
藤倉コンポジットのアクアチャージがおすすめです。
他メーカーからも販売されていますが、スマホを短時間でフル充電できる水使用充電器はアクアチャージ以外に見当たりません。
藤倉コンポジットが販売するアクアチャージの使い方は、以下のとおりです。
持ち出し用防災セットまたは備蓄品にアクアチャージを備えておけば、水を入れるだけでスマホ2台をフル充電できます。
防災セットに備えるスマホ充電用の充電器のおすすめ
防災グッズとして備えるスマホ充電用の充電器のおすすめは、持ち歩き用防災セット(防災ポーチ)、持ち出し用防災セット、備蓄品で異なります。
持ち歩き用 (防災ポーチ) | 持ち出し用 | 備蓄品 | |
モバイルバッテリー | ★ 充電して持ち歩く習慣をつける | (★) 持ち歩き用に入れない場合 | |
乾電池式充電器 | ★ | ★ 電池を多めに備える | |
手回し充電器 | (★) ライトやラジオとして | ||
ソーラーパネル | (★) 余裕があれば | ||
水使用充電器 | (★) 防災リュックに余裕があれば | ★ |
平時から充電したモバイルバッテリーを防災ポーチに入れる習慣があれば、持ち出し用防災セットと備蓄品に乾電池式充電池を備えておけば、被災直後も避難時や避難後でもスマホの充電源を確保できます。
モバイルバッテリーを持ち歩く習慣がないなら、モバイルバッテリーと乾電池式充電池を持ち出し用防災セットに入れておきます。
ただし、定期的にモバイルバッテリーを充電する手間がかかるので、できるだけ防災ポーチに入れて持ち歩く習慣をつけましょう。
水使用充電器は備蓄品として備えるのを基本とし、防災リュックに余裕があれば入れておくことをおすすめします。
手回し充電器はラジオやライトとして備え、ソーラーパネルは備蓄スペースや予算に余裕があれば備えておくことで足ります。
充電器は少なくとも2台備える
災害発生時には、スマホだけでなく他の電気機器を充電しなければならないことがあります。
そのため、充電器は少なくとも2台は備えるようにしましょう。
上で書いたとおり、防災ポーチにモバイルバッテリー、持ち出し用防災セットと備蓄品に乾電池用充電池と電池を備えるのが基本です。
この備え方なら、被災直後にはモバイルバッテリーを使って充電し、なくなった後は乾電池式充電池に切り替えられます。
乾電池式充電池は乾電池さえあれば使えるので、避難所生活が長引く場合にも役立ちます。
また、自宅が被害を受けて持ち出し用防災セットや備蓄品を持ち出せなかった場合でも、モバイルバッテリーが手元にあれば、1~2回は充電することができます。
まとめ
スマホは被災したときに欠かせない防災グッズなので、バッテリー切れで使えなくなるのを防ぐために、必ず充電器を備えておきましょう。
手回し充電器やソーラーパネルは防災グッズとして注目されがちですが、実用性が高いとは言えないので注意してください。
- 防災ポーチにモバイルバッテリー
- 持ち出し用防災セットに乾電池式充電池
- 備蓄品に乾電池式充電器