- 賃貸住宅(マンション、アパート)で加入する地震保険
- 地震保険は賃貸住宅でも必要か
- 家財の査定方法の流れ
防災講義の参加者から、「賃貸マンションやアパートでも地震保険は必要か。」という質問を受けることがあります。
賃貸住宅に住んでいる場合、建物は自分の所有ではないので、建物内にある家財を補償してもらう必要性によって加入を検討することになります。
この記事では、賃貸住宅(マンションやアパート)に住んでいる人が地震保険に加入する必要性と、加入する場合の保険対象について解説します。
「そもそも、地震保険は必要か」と思っている人は、以下の記事を読んでみてください。
地震保険のメリットとデメリット、加入しておきたい人と必要性が低い人について解説しています。
賃貸住宅と地震保険
地震保険とは、地震、噴火、津波が原因で建物や家財が損害を受けた場合に補償を受けることができる保険です。
賃貸住宅(マンションやアパート)に入居する場合、物件の契約と同時に火災保険に加入するのが一般的です。
しかし、地震などを原因で住宅や家財が被害を受けても、その損害は火災保険では補償されません。
そのため、地震などでに備えて、地震保険の加入を検討する必要があります。
地震保険は、必ず火災保険とセットで加入することになっています。
また、損害保険会社によって保険内容や保険料に差がないので、火災保険の内容や保険料を比較して加入することになります。
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火災保険の契約した後、期間の途中で地震保険に加入することは可能です。
賃貸住宅に住んでいる場合、地震保険の保険対象は家財のみ
地震保険の保険対象は、3つあります。
保険対象 | 補償されるもの |
居住用の建物 | 住居としてのみ使用する建物または併用住宅(店舗兼自宅など) |
家財 | 家具、電気機器(テレビ、パソコン、冷蔵庫など)など |
居住用の建物と家財 | 建物と家財の両方 |
地震保険の保険対象となるのは、、火災保険で保険対象にしたものに限られます。
賃貸住宅の場合、マンションやアパートはオーナーの所有なので、入居者が地震保険に加入する場合の保険対象は家財のみとなります。
地震保険で補償される「家財」
地震保険の対象となる家財は5種類に分類され、それぞれ細かい品目に分けられています。
また、各分類の品目ごとに構成割合と最大値が設定されています。
分類 | 代表品目 | 構成割合 | |
各 | 最大 | ||
食器・陶器類 | 食器、陶器置物、食料品、調理器具など | 1% | 5% |
電気器具類 | 電子レンジ、テレビ、パソコン、冷蔵庫など | 2.5% | 20% |
家具類 | 食器棚、タンス、机、椅子など | 4% | 20% |
身の回り品その他 | カメラ、書籍、カバン、靴など | 2.5% | 25% |
衣類寝具類 | 衣類、寝具 | 15% | 30% |
家財の補償方法については、後ほど詳しく解説します。
地震保険では、以下のような家財は補償対象外です。
- 居住用の建物以外に収容されている家財
- 1個または1組の価額が30万円を超える家財
- 自動車
自宅(保険対象の建物)以外にある家財、30万円以上の高価な家財は地震保険では補償されないということです。
地震保険(家財)の保険金額
地震保険(家財)の保険金額は、火災保険の保険金額の30%から50%の間で設定する必要があります。
例えば、火災保険の家財の保険金額を500万円にした場合、地震保険の保険金額は250万円が上限となります。
火災保険の保険金額を1000万円にしても、地震保険では最大で500万円しか補償されません。
また、保険金額の上限は1000万円で、それ以上の金額は設定できません。
地震保険(家財の)損害区分
地震保険の保険金は実際の損害額とは関係なく、4つの損害区分に応じて支払われます。
【家財の損害区分】
損害区分 | 基準 | 保険金額 (時価額が限度) |
全損 | 損害額が保険対象の家財全体の時価額の80%以上 | 保険金額の100% |
大半損 | 損害額が保険対象の家財全体の時価額の60%以上80%未満 | 保険金額の60% |
小半損 | 損害額が保険対象の家財全体の時価額の30%以上60%未満 | 保険金額の30% |
一部損 | 損害額が保険対象の家財全体の時価額の10%以上30%未満 | 保険金額の5% |
参考:地震保険制度の概要:財務省
時価額が限度なので、地震保険に加入したときから時間が経過した後に被災した場合、損害区分が全損と認められた場合でも、保険加入時に設定した保険金額は満額支払われません。
地震保険の保険料
地震保険の保険料は、建物の構造と所在地によって変動します。
地震保険の保険料については、別の記事で詳しく解説しているので、関心がある人は読んでみてください。
賃貸住宅(マンション、アパート)でも地震保険(家財)が必要か
賃貸住宅の場合、地震などで建物が受けた損害への対応はオーナーが負担するのが基本なので、「賃貸なら地震保険は必要ない。」と思っている人が少なくありません。
しかし、住宅のオーナーが被災後すぐに修繕作業を始めるとは限りませんし、家財が被害を受けると生活水準が下がり、不便な思いをすることになります。
地震保険(家財)に加入するかどうかは各家庭で判断することですが、以下のような事情がある場合には、地震保険の必要性が高いと言えます。
壊れると困る家財をたくさん所有している
地震保険は、30万円を超える高価な家財や自動車は補償対象外ですが、それ以下の家財は保険対象です。
30万円以下の家具・家電などで、壊れると被災後の生活に支障が出る家具が多い場合は、地震保険に入っておいた方が良いでしょう。
被災後の生活再建が難しい
地震の影響で家具や家電が壊れると、日常生活に支障が出ます。
新しいものを買い揃えるだけの貯蓄があれば問題はありませんが、貯蓄が少ない場合、損害を受けた家具を買い直すまでに時間がかかり、不便な生活を続けることになります。
また、被災後に収入が途絶える見込みの場合も、家財の買い直しが困難になり、被災前の生活を取り戻すまでに時間がかかる傾向があります。
被災後の生活再建が難しい場合は、家財に地震保険をかけておく必要背は高いでしょう。
地震などのリスクが高い地域に住んでいる
地震保険では、地震、噴火、津波が原因で損害を受けた場合に補償を受けることができます。
住んでいる地域で過去に発生した地震、噴火、津波を確認したり、ハザードマップなどを見たりして地域の危険度を調べ、リスクが高い場合は地震保険に加入しておくと安心です。
地震保険(家財)で保険金が支払われるまでの流れ
家財を保険対象として地震保険に加入した場合、どのような流れで保険金が支払われるのでしょうか。
賃貸マンションに住んでいるAさんが、2018年7月に地震保険(家財のみ、保険金額500万円)に加入し、その後発生した地震によって以下の損害を受けたと想定し、保険金を受け取るまでの流れを確認していきます。
- パソコン、テレビ、カメラが落下して壊れた
- 食器棚と倒れて壊れ、中の食器も割れた
- 本棚が倒れて壊れた
- 冷蔵庫が倒れて故障し、中の食料品が痛んで廃棄した
- 洗濯機と電子レンジが故障した
- ベッドが壊れた
地震が原因で家財が破損した場合、まずは地震保険に加入した損害保険会社に連絡します。
後日、損害保険会社の調査員が賃貸マンション(自宅)を訪問し、家財の損害区分を決めるための調査(査定)を行います。
査定は、「地震保険で補償される「家財」」に掲載した、家財の分類表に基づいて行われます。
Aさんのケースでは、以下のとおりです。
- 食器陶器類:食器、食料品で1%×2種類=2%
- 電気器具類:パソコン、テレビ、冷蔵庫、電子レンジで2.5%×4種類=10%
- 家具類:食器棚、本棚で4%×2種類=8%
- 身の回り品その他:カメラで2.5×1種類=2.5%
- 衣類寝具類:ベッドで15%×1=15%
以上を合計すると、2%+10%+8%+2.5%+15%=37.5%となります。
これは、損害区分認定基準の「損害額が保険対象の家財全体の時価額の30%以上60%未満」に当てはまるので、損害区分は「小半損」です。
※分かりやすくするため、時価は考慮していません。
以上の査定結果から、Aさんに対して支払われる保険金額は、500万円×保険金額の30%=150万円です。
地震保険は、被災者の生活の安定に資することを目的としており、保険金の支払い業務を迅速に行う体制が整備されているので、通常の保険と比較して早期に保険金が支払われる傾向があります。
ただし、損害保険会社による差が大きく、過去の地震発生時には、請求から支払までに相当な時間がかかり、批判の的になった損害保険会社もあります。
地震保険の査定では、一つひとつの家財の価格は関係ありません。
一つひとつの家財の価格が安くても、たくさんの品目が被害を受けると保険金額の大きい損害区分になることがあります。
一方で、高価な家財がいくつか損害を受けても、他の家財が無事なら「一部損(保険金額の5%)」にしかなりませんし、分類ごとの構成割合が10%以下だと保険金は支払われません。
この仕組みは、家財のみに地震保険をかけるかどうかを考える上で重要なことです。
まとめ
賃貸住宅(マンション、アパート)に住んでいる場合、「地震保険は必要だろうか」と思うかもしれません。
しかし、壊れると困る家具が多く、損害を受けた場合に買い直す余裕がなさそうな場合は、地震保険(家財)に加入しておくことをおすすめします。
特に、地震などが発生するリスクが高い地域に住んでいる場合は、加入しておきたいものです。
ただし、30万円を超える高価な家具などは補償対象外なので、あらかじめ所有している家具の価値を確認した上で、地震保険を選ぶようにしてください。
地震保険を選ぶと書きましたが、地震保険の内容や保険料はどの損害保険会社も同じです。
そのため、セットで加入することになる火災保険の内容や保険料を比較することになります。
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