- 被災者生活再建支援制度とは
- 支援金額
- 支援制度を利用する方法
被災して住宅や家財が損害を受けると、自分や家族が無事でも生活の建て直しに相当の時間とお金、労力がかかります。
特に、住宅が被害を受けると避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされ、被災前と大きく生活が変化してしまいます。
そこで、災害によって住宅被害を受けた被災者を支援するために設けられている行政の制度が、被災者生活再建支援制度です。
この記事では、被災者生活再建支援制度とはどのような制度か、対象となる災害と世帯、被災者生活再建支援金の金額、申請方法、支給までの流れについて解説します。
目次
被災者生活再建支援制度とは
被災者生活再建支援制度とは、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用し、住宅に被害を受けた被災者に支援金を支給する制度です。
自然災害の影響により、生活基盤に著しい被害を受けた人の生活再建を支援し、住民の生活の安定と被災地が速やかな復興を図ることを目的としています。
根拠法令は、被災者生活再建支援法です。
法整備がなされた当初は、申請手続きが複雑な上に用途も限定されるなど利用しにくい制度でした。
しかし、2007年の改正により、申請手続きが改善され、用途制限も削除されたことで、利用しやすくなっています。
支給金額は、基礎支援金と加算支援金の合計額で算出され、いずれも被害の程度に応じて金額が変動します。
被災者生活再建支援制度の対象となる自然災害
被災者生活再建支援制度の対象となるのは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの自然現象の影響で住宅が被害を受けた場合です。
ある自然災害が制度の対象となるかどうかは、以下の基準に基づいて都道府県から公示されます。
①災害救助法施行令第1条第1項第1号又は第2号に該当する被害が発生した市町村
②10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村
③100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県
④①又は②の市町村を含む都道府県で5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村(人口10万人未満に限る)
⑤①~③の区域に隣接し、5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村(人口10万人未満に限る)
⑥①若しくは②の市町村を含む都道府県又は③の都道府県が2以上ある場合に、5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村(人口10万人未満に限る)2世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村(人口5万人未満に限る)
引用:被災者生活再建支援制度の概要|内閣府
被災者生活再建支援制度の対象となる世帯
制度の対象となる自然災害により、以下のような被害を受けた世帯が対象となります。
- 住宅が「全壊」した世帯
- 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
- 災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
- 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)
被災者生活再建支援金の金額
被災者生活再建支援金の金額は、基礎支援金と加算支援金の2種類あります。
支援金の種類 | 内容 |
基礎支援金 | 世帯の被害の程度に応じて支給 【被害の程度と支給額】 ・全壊:100万円 ・解体:100万円 ・長期避難:100万円 ・大規模半壊:50万円 |
加算支援金 | 住宅の再建方法に応じて支給 【再建方法と支給額】 ・建設・購入:200万円 ・補修:100万円 ・賃借(公営住宅は対象外):50万円 |
例えば、住宅が全壊し、新たに住宅を購入した場合、基礎支援金100万円(全壊)+加算支援金200万円(建設・購入)=300万円が支給されます。
また、長期避難して公営住宅に居住した場合、基礎支援金100万円(長期避難)+加算支援金0円(公営住宅)=100万円となります。
ただし、世帯人数が1人の場合は、上記支援金額の3/4が支給されます。
被災者生活再建支援金支給の申請方法
被災者生活再建支援金支給の申請方法について、解説していきます。
申請先
被災時点で住んでいた(被害を受けた住宅のある)市区町村役場です。
被災後に転居した場合でも、被災時に住んでいた地域で申請することになります。
必要書類
被災者生活再建支援金支給の申請は、申請書に必要書類を添付する方法により行います。
必要な書類は、被害の程度によって異なります。
出典:自然災害による被災者のための被災者生活再建支援制度|被災者生活再建支援法人 公益財団法人都道府県センター 被災者生活再建支援基金部
申請書
申請先の市区町村役場で、被災者生活再建支援金支給申請書を交付してもらいます。
申請書と一緒に交付される記載例に基づいて作成します。
罹災証明書
罹災証明書とは、自然災害などで被災した家屋などの「被害の程度」を証明する書類です。
被災者が市区町村役場(自然災害)や消防署(火災)に申請することで、専門の調査員が被害認定調査を実施して被害の程度を判定した上で発行されます。
罹災証明書については、別の記事で詳しく解説しています。
被災経験がないと聞いたことがないかもしれませんが、被災者生活再建支援制度以外にも多くの被災者支援制度の申請で提出を求められる重要な書類です。
基本的な内容や申請方法くらいは知っておいた方が良いでしょう。
解体証明書
解体証明書とは、建物の解体や取壊し作業を行った業者から交付される、住宅を解体したことを証明する書面です。
建物取壊し証明書や建物滅失証明書ということもあります。
滅失登記簿謄本
滅失登記簿謄本とは、建物滅失登記によって閉鎖された登記簿謄本です。
建物滅失登記をした法務局などで申請して取得します。
建物滅失登記とは、現在ある登記簿を除去するための登記です。
敷地被害証明書類
敷地被害証明書類とは、住宅の敷地内の被害を証明できる書類です。
例えば、敷地の修復工事の契約書や、被災建築物応急危険度判定の結果などが当てはまります。
住民票
被災者生活再建支援制度では、世帯の構成員が1人か複数かで支援金の金額が異なります。
そのため、世帯の構成員を確認するために、提出を求められます。
預貯金通帳の写し(コピー)
被災者生活再建支援金を振り込んでもらう口座のコピーを提出します。
契約書などの写し(コピー)
加算支援金の支給を申請する場合、建設・購入、補修、賃借に関する契約書などのコピーを添付する必要があります。
申請できる期間
被災者生活再建支援金の支給申請には、申請期間が設けられています。
支援金の種類 | 期間 |
基礎支援金 | 災害発生日から13ヶ月以内 |
加算支援金 | 災害発生日から37ヶ月以内 |
被災者生活再建支援金の支給までの流れ
被災者生活再建支援金の支給まで一般的なの流れは、以下のとおりです。
- 災害支援金を支給
- 発生
- 被災者生活再建支援法適用
- 都道府県から国、支援法人、市町村に支援法適用の報告と公示
- 罹災証明書の発行(被害の程度を認定)
- 被災者生活再建支援金支給申請
- 市区町村が申請を受理し、都道府県が支援法人へ送付
- 支援法人が被災者へ支援金支給
申請から支給までの期間
申請先の規模やマンパワー、災害の規模や被害状況などによりますが、一般的には1~3ヶ月程度はかかります。
まとめ
自然災害などの影響で住宅が損害を受けると、その後の生活に大きな影響が及びますし、住宅の再建のために莫大なお金がかかります。
被災者生活再建支援制度は、住宅が被災した場合に、生活再建のために支援金が支給される制度です。
大きな金額ではありませんが、被災後の生活を立て直す役には立つので、要件に当てはまる場合は申請しましょう。
【参考】