- 波浪(はろう)の意味
- 波浪と高波・高潮・津波との違い
- 波浪警報・波浪注意報の意味と発表基準
天気予報を見ていると、「波浪」という気象用語を見聞きすることが多いですが、正しい意味を知っていますか。
また、波浪と高潮・高波・津波の違いの違いを知っていますか。
波浪、高潮、高波、津波など天気予報で用いられる気象用語について知っておくことは、災害に備える上で大切なことです。
正しい知識がないと、ニュースなどで注意や警戒が呼びかけられても適切な判断や行動ができず、大きな被害を受けてしまうおそれがあるからです。
この記事では、波浪とは何か、高波、高潮、津波とは何か、高波、高潮、津波の違いについて解説します。
波浪の意味とは
波浪とは、海面の波の動きであり、「風浪」、「うねり」、「風浪+うねり」によって生じる波の総称です。
海面の波は、風浪とうねりが区別されずに混在していることがほとんどなので、風浪とうねりをまとめて波浪と呼ぶのが一般的です。
気象庁は、以下のとおり波浪を定義しています。
海洋表面の波動のうち、風によって発生した周期が1~30秒程度のもの。風浪とうねりからなる。
引用:気象庁
「風浪」と「うねり」という言葉は聞きなれない人が多いと思うので、もう少し詳しく解説しておきます。
風浪とは
出典:気象庁
風浪とは、海面上を吹く風を直接の原因として起こる浪(波)のことです。
発達過程にある波で、不規則かつ尖っているのが特徴です。
その他、風浪には以下のような特徴があります。
- 風が吹いている方向へ進む
- 発達過程の波によく見られる
- 波の形状が不規則で先端が尖っている
- 波が発達するほど、波高(波の高さ)は高くなる
- 波が発達するほど、波速(波の進む速さ)は速くなる
- 波が発達するほど、周期(波の一番高い(もしくは低い)ところが来て、次の波の一番高い(もしくは低い)ところが来るまでの時間)は長くなる
- 波が発達するほど、波長(波の一番高い(もしくは低い)ところが来て、次の波の一番高い(もしくは低い)ところが来るまでの長さ)は長くなる
うねりとは
出典:気象庁
うねりとは、風を原因としない波のことです。
海面上に吹く風が弱くなる、風向きが急変する、風浪が風のないエリアまで進むなどして起こります。
発達のピークを過ぎて衰えていく過程の波で、規則的かつ丸みを帯びているのが特徴です。
その他、うねりには以下のような特徴があります。
- 風の力が働かず、少しずつ減少しながら進む(伝わる)
- 波の形状が規則的で先端が丸みを帯びている
- 波の一番高いところが横に長く連なっている
- ゆったりしていて穏やかな波に見える
- 風浪より波長や周期が長い
- 海岸付近では波が高くなりやすい
磯波とは、風浪とうねりが海岸付近の浅海に進んで変形した波です。
風浪やうねりは、海岸付近に進んで水深が浅くなるにつれて波長が短く、波高が高くなり、波形も不安定になってついには砕けます。
こうした、海岸付近特有の波を磯波と呼びます。
波浪注意報・波浪警報・波浪特別警報の意味と発表基準
気象庁は、災害に対する注意や警戒を呼びかける目的で、気象注意報、気象警報、特別警報を発表します。
いずれも、波浪によって災害が起こるおそれがあるときに発表される「予報」です。
気象注意報、気象警報、特別警報の発表基準
種類 | 発表基準 |
気象注意報 | 自然現象が原因で災害が発生するおそれがある |
気象警報 | 自然現象が原因で、「重大な」災害が起こるおそれがある |
特別警報 | 警報の発表基準をはるかに超える気象現象が予想される 重大な災害が起こるおそれが著しく高まっている |
波浪に関する注意報、警報、特別警報の発表基準
波浪に関しては、波浪注意報、波浪警報、波浪特別警報の3つがあり、それぞれ発表基準が決められています。
種類 | 発表基準 |
波浪注意報 | 高波で災害が発生するおそれがある |
波浪警報 | 高波で重大な災害が発生するおそれがある |
波浪特別警報 | 数十年に一度の強さの台風や同程度の温帯低気圧で高波になる |
それぞれ、ニュース、ネット、アプリ、防災無線などを通して、避難に関する情報と一緒に一般家庭へ伝えられます。
気象警報と気象注意報の発表基準は、各地域の過去の気象と災害発生の関係性を調査し、気象庁と各地域の行政機関が調整した上で設定します。
したがって、各地域によって発表基準が異なります。
また、気象や災害は常に変化し、防災の技術は日々進歩しているので、気象警報などの発表基準は常に見直しが行われています。
各地域の気象警報・気象注意報の発表基準については、気象庁|警報・注意報発表基準一覧表で確認することができます。
気象警報については、別の記事で詳しく解説しています。
高波、高潮、津波の意味とは
高波、高潮、津波は、それぞれ波や海面の状態を表す気象用語です。
波浪と混同されることが多いので、意味や特徴について確認しておきましょう。
高波とは
高波とは、名前のとおり、高い波(波浪)のことです。
気象庁は、「波浪注意報・警報の対象になる程度の高い波」と定義しています。
天気予報で高波が出てきた場合、単なる高い波ではなく、災害を発生させるレベルの高い波という意味です。
高波の原因は、台風などの影響による強風です。
また、風浪とうねりがぶつかり合って高波が発生することもあります。
高潮とは
出典:気象庁
高潮とは、台風や低気圧が海面上を通過するときに、潮位(海面の高さ)が急激に上昇する現象です。
気象庁は、「台風など強い気象じょう乱に伴う気圧降下による海面の吸い上げ効果と風による海水の吹き寄せ効果のため、海面が異常に上昇する現象。」と定義しています。
高潮の原因は、大きく2つあります。
吸い上げ効果
一つは、吸い上げ効果です。
台風や低気圧の中心部は、周辺より気圧が低くなります。
そのため、気圧の高い周辺の空気が海水を押し下げ、中心部の空気が海水を吸い上げて、海面が上昇します。
これが吸い上げ効果です。
吹き寄せ効果
もう一つは、吹き寄せ効果です。
台風や低気圧の影響による強風が沖から海岸へ向かって吹くことで、海水が海岸に吹き寄せられて、海岸の海面が上昇します。
これが吹き寄せ効果です。
高潮+高波は要注意
危険なのは、高潮で潮位が上昇した状態で高波が起こった場合です。
高潮や高波単体では届かなかったような場所まで、波が押し寄せることがあるからです。
津波とは
出典:気象庁
津波とは、海底の地形が急に変化し、海面が盛り上がったり沈み込んだりすることで生じる、巨大な波の伝播現象です。
津波の主な原因は、海底の地震です。
地震の震源周辺では、海底の地形が上昇または下降します。
その結果、海水が押し上げられたり引き込まれたりして波が発生し、四方に広がります。
津波は、海面だけでなく、海底から海面までの海水が塊となって動く、非常に大きなエネルギーを持った波です。
そのため、30cm程度の津波でも、簡単に人や大きな物が引き込まれてしまいます。
高波(波浪)、高潮、津波の違い
最後に、高波(波浪)、高潮、津波の違いについて解説します。
原因の違い
まず、原因の違いです。
高波と高潮はいずれも気象が原因ですが、津波は地震などの地殻変動が原因です。
現象が起こる範囲の違い
現象が起こる範囲も違います。
高波と高潮は、海面上の現象ですが、津波は、海底から海面までの海水全体が塊となって動く、広範囲の海水全体に及ぶ現象です。
波長の違い
波長も違います。
高波や高潮の波長は、短いと数m、長くても数百mですが、津波の波長は、数kmから数百kmに及びます。
仮に波高が同じでも、高波や高潮は、波長が短いため一つ一つの波の力は小さく沿岸で砕け散ることが多いものです。
しかし津波は、波の力が圧倒的で、勢いが衰えないまま連続して押し寄せます。
また、海岸付近の浅海に入ると一気に波高が高くなり、発生時の高さ以上のところまで甚大な被害をもたらします。
速度も、津波の方が高波や高潮よりも早く、避難行動の遅れが命の危険に直結します。
まとめ
波浪(はろう)は、ニュースなどでよく見聞きする気象用語です。
水害に備えるためには、波浪(高波)の意味や高潮や津波との違いを正しく理解しておくことが大切です。