災害への備えを日常に!防災グッズをもっと身近に!

オフィス用の防災グッズ・防災セットのおすすめ!企業で防災講義を担う防災士が解説

オフィス用 防災グッズ

この記事で分かること
  • オフィス用の防災セットの選び方
  • オフィスにおすすめの防災セット

災害は、いつ、どこで、どのように発生するか分かりません。

仕事中に災害が発生した場合に備え、オフィスにも防災グッズを備えておくことが大切です。

「会社から支給された防災セットがあるから大丈夫。」、「会社が十分な備蓄品を備えているはず。」と思うかもしれません。

しかし、会社支給の防災セットには、災害発生時に最低限必要な防災グッズが揃っているとは限りません。

従業員全員分に行きわたるだけの十分な備蓄品を備えていない可能性もあります。

MEMO

私は企業や官公庁で防災講義を務める機会が多いですが、いざというときに従業員の命を守るための備えが十分だと太鼓判を押せるところは、残念ながら多くはありません。

 

中小企業では、防災に回す経済的な余力がないところが多いです。

 

官公庁では、一応の備えはできていますが、落札制度の弊害で「安かろう悪かろう」の防災グッズや備蓄品を備えているところがあります。

オフィス用の防災セットの選び方

オフィス用の防災グッズを備えるには、まず、勤務先が従業員用に備えている防災セットや備蓄品を確認してください。

内閣府は、平成27年3月に「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」を策定し、その中で「一斉帰宅抑制における従業員等のための備蓄の考え方(参考資料2)」を示しています。

ガイドラインでは、大規模地震発生で被災する可能性がある全ての事業者に対して、事業所内で勤務する全従業員に以下の防災グッズを備えることを求めています。

3日分の備蓄品の目安

(1)水については、1人当たり1日3リットル、計9リットル

(2)主食については、1人当たり1日3食、計9食

(3)毛布については、1人当たり1枚

(4)その他の品目については、物資ごとに必要量を算定

備蓄品目の例示

(1)水:ペットボトル入り飲料水

(2)主食:アルファ化米、クラッカー、乾パン、カップ麺※水や食料の選択に当たっては、賞味期限に留意する必要がある。

(3)その他の物資(特に必要性が高いもの)・毛布やそれに類する保温シート・簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパ等)・敷物(ビニールシート等)・携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池・救急医療薬品類

引用:大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン

上記に加えて、非常用発電機、燃料※、工具類、調理器具(携帯用ガスコンロ、鍋等)、副食(缶詰等)、ヘルメット、軍手、自転車、地図などを備えることが望ましいとしています。

また、平成25年に東京都が「帰宅困難者対策条例」を施行するなど、各自治体でも備蓄に関するルール作りが進んでいます。

しかし、努力義務で罰則がないものが多く、官公庁や大企業はともかく、中小企業や小規模事業者では十分な備えができていないのが現状です。

そのため、勤務先が準備した防災セットや備蓄品を確認し、備えがない場合や不足している場合は、自分の身を自分で守るために防災グッズを備えなければなりません。

自宅に備える持ち出し用防災セットについては、別の記事で詳しく解説しています。

持ち出し用防災セットの中身リスト一覧!最低限必要な防災グッズを防災士が徹底解説

オフィスに備える防災セットの中身リスト一覧

オフィスに備える防災グッズは、以下のとおりです。

オフィス用防災グッズ用途や備え方
防災ケース机や棚に収納できる、カバンに入れて持ち出せる、片手で持ち出せる
保存水5~7年保存水500ml×2~3本(半日~1日分)
非常食5~7年保存アルファ米やお菓子などの好きなもの(半日~1日分)
モバイルバッテリー容量(出力)が大きい、急速充電、小さい、軽い、薄い
簡易トイレ5回分(1日分)
ウェットティッシュノンアルコール・無香料を1パック
歯磨きシート水がいらないシートを1パック
マスク粉塵や煙対策
軍手ケガ対策
アルミブランケット防寒対策
エアーマットオフィスで夜を過ごすとき用

防災ケース

オフィス用防災セットは、オフィス内の手の届く範囲に備えておくので、机の中や棚に書類などと一緒に収納できるケースタイプがおすすめです。

プラスティックや紙製など軽めの素材だと、持ち出すときの負担が少なくて済みます。

また、災害発生時には手で持つか、カバンに入れて持ち出すので、片手で持つことができて、普段使いのカバンにも入るサイズを選びます。

保存水

500mlペットボトルを2~3本備えておけば、半日から1日分の水を確保できます。

市販の水は消費期限が1年から1年半程度と短いので、5~7年保存できる長期保存水を備えましょう。

特に、転勤のない職場の場合、防災セットを備えたまま点検もせず何年も経過するというケースが多いので、保存期間が長めの水を選んでおくことをおすすめします。

非常食

定番のアルファ米を1~2食と、栄養食やお菓子など自分が好きなものを備えておきます。

栄養バランスに配慮することは大切ですが、災害発生直後に最も重要なのは「ストレスが和らぐ瞬間を作ること」です。

被災した人の多くが、大きな精神的ダメージを受けて強いストレスを抱えます。

「好きなものを食べる」ことは、被災時の数少ない安らぎになり、一時でもストレスを和らげることができます。

モバイルバッテリー

災害発生時は、防災アプリやSNS、ネットで家族の安否を確認したり、災害情報を収集したりするためにスマホをよく使います。

仕事中の場合、災害発生直後でも仕事の電話をかけたり、出張キャンセルの連絡をしたりすることもあります。

バッテリー切れを防ぐため、必ずモバイルバッテリーを備えておきましょう。

スマホをフル充電できるだけの容量(出力)と急速充電機能は確保しておきたいところです。

また、オフィス用の防災ケースは容量が限られているので、できるだけ「小さく、薄く、軽い」商品がおすすめです。

MEMO

「会社のコンセントで充電すれば良い。」と思うかもしれませんが、大規模災害が発生すると停電するリスクがあります。

 

大企業や官公庁では予備電源に切り替わりますが、中小企業などではそうした設備がないところも多いので、自分で充電用品は備えておきましょう。

防災コラム

日中の温度が高温になる場所に防災グッズを保管するのは、危険です。

 

防災グッズの多くは常温保管が推奨されており、高温な場所に保管すると劣化や性能低下などを招くおそれがあります。

 

特に注意したいのが、保存水、非常食、乾電池を使う電気機器です。

 

保存水や非常食は、賞味期限前でも劣化し、口にすると体調を崩すリスクが高くなります。

 

乾電池を使う電気機器は、中に入れておいた乾電池が劣化して液漏れ、発熱、破裂する可能性があります。

防災グッズを高温な場所で保管することのリスクについては、別の記事で詳しく解説しています。

車載や車中泊におすすめの防災グッズ、役立つ防災セットを防災士が解説

簡易トイレ

設備の故障や断水でトイレが使えなくなることを想定し、簡易トイレも備えておきます。

備える量は、5回分程度が目安になります。

市販の防災セットでは3回分/日が入っているものが多く、3回分で足りるという意見もありますが、災害発生時はトイレのリズムが乱れることがあるので、多めに備えておくと安心です。

MEMO

オフィスがビルの中に場合は、特に断水のリスクが高いです。

 

ビルでは、水のくみ上げや各部屋への供給にポンプを用いているので、設備の故障だけでなく停電して各ポンプが停止することでも断水することがあります。

ウェットティッシュ

食事前やトイレ後に手を拭く、汗をかいた顔や体を拭く、汚れた物を拭くなど使い道が多いので、防災ケースに1パック入れておきましょう。

色々な部位や場所を拭くので、刺激の少ないノンアルコール・無香料のウェットティッシュを選びます。

歯磨きシート

帰宅困難になって職場で過ごす場合、衛生面や口臭には気を使いたいところです。

断水で口をすすぐ水が手に入らないことを想定し、水のいらない防災シートを備えておくことをおすすめします。

ウェットティッシュでも代用できますが、できれば歯磨き専用のシートを備えておきましょう。

マスク

粉塵や煙の吸い込みや感染症予防に欠かせないのが、マスクです。

屋内で火災が発生した場合にも、口や鼻を抑える役目を果たします。

冬場には常備している人も多いですが、防災ケースにも1枚は入れておきましょう。

快適ガード のど潤いぬれマスク 無香タイプ レギュラーサイズ 3セット入

軍手

オフィス内で被災すると、床や机の上に散乱した窓ガラスや照明器具の破片でケガをすることがあります。

手や腕をケガすると避難行動にも影響が出るので、軍手をはめてケガを防止しましょう。

革製手袋や作業用手袋の方が安全性が高いので、余裕があれば備えておくことをおすすめします。

アルミブランケット

アルミブランケットは、災害発生時の防寒対策の定番です。

季節や屋内外に関わらず夜は冷えこむので、アルミブランケットを1つ備えておきましょう。

就寝時にはかけ布団代わりとしても使えます。

エアーマット

帰宅困難になってオフィスで夜を明かすときに役立つのがエアーマットです。

椅子やソファで寝ると、体の節々が痛みますし、眠りが浅くなりがちで、帰宅や避難行動に影響が出ることがあります。

エアーマットがあれば、リラックスして熟睡することができます。

オフィス用防災セットのおすすめ

企業に勧めたことがあるオフィス用防災セットに限定して紹介します。

注意

オフィス用防災セットには、「帰宅困難者用のセット」と「帰宅者用のセット」の2種類があります。

 

それぞれ中身が異なるので、間違えて購入しないように注意してください。

帰宅困難者用のオフィス用防災セット

帰宅困難になった場合に役立つ防災グッズが入ったセットです。

A4エマージェンシーケース|LA・PITA

国内最大級の防災メーカー「LA・PITA」が販売するオフィス用の防災セットです。

防災ケースは、A4サイズと小さいので机や棚に収納しておけますし、2.2kgと軽いので女性でも無理なく持ち出すことができます。

クリアケースなので、いざというときにすぐ中身を確認して取り出しやすいのもメリットです。

中身の防災グッズはケースを含めて7点と少なめですが、一つひとつのクオリティーが高いので安心して備えておけます。

他のオフィス用防災セットと異なり、エアーマットが入っているので、帰宅困難になってオフィスで夜を明かす場合も安心です。

防災講義では、従業員用にはLA・PITAの防災セット「SHELTER」を紹介し、同時に企業の防災担当者にはA4エマージェンシーケースを勧めることが多いです。

各方面のメディアに登場! おしゃれで高機能な防災セットLA・PITAシリーズ

価格(税込)4,298 円
ケースのサイズA4サイズ(幅325×高260×奥84mm)
重さ2.2kg
防災グッズ・非常食(ライスクッキー8枚入)×1

・5年保存水500ml×2

・簡易ライト×1

・簡易トイレ(3回分)×1

・アルミブランケット×1

・エアーマット×1

・マスク×1

買い足す防災グッズ

モバイルバッテリー、ウェットティッシュ、歯磨きシート、軍手

災害備蓄セット SBS-100|KING・JIM

テプラを販売する事務用品メーカー「KING・JIM」が販売するオフィス用防災セットです。

紙製の防災ケースが仕切り付きの枕になるので、アルミブランケットとセットで使えば、オフィス内のソファや椅子が簡易ベッドに早変わりです。

ケースに部署、氏名、品質保持期間が記入できるところは、事務用品メーカーらしさが出ています。

個人で購入している人もいますが、事業所が従業員用にまとめて購入しているケースが多いです。

価格(税込)5,184円
ケースのサイズA4サイズ(幅70×高304×奥220mm)
防災グッズ・非常食(アルファ米×2、ライスクッキー8枚入×1)

・5年保存水500ml×2

・簡易トイレ×3

・アルミブランケット×1

・タオル×1

買い足す防災グッズ

モバイルバッテリー、(ウェットティッシュ、)歯磨きシート、マスク、軍手、エアーマット

帰宅者用の防災セット

オフィスから家に帰るときに役立つ防災セットです。

災害帰宅セット KTS-100|KING JIM

KING JIMが販売する、オフィスから帰宅するためのグッズが入った防災セットです。

A4サイズのケースに、帰宅時に防災グッズを詰めるナップサックが入っています。

災害発生時に帰宅するための防災セットなので、避難所やオフィスで使用するエアーマットやアルミブランケットは入っておらず、代わりにホイッスルやアルミポンチョ、軍手など帰宅に必要な防災グッズが揃っています。

災害発生時に帰宅できるかどうかは発生後でないと分からないので、帰宅困難になった場合を想定して、災害備蓄セットと2つセットで購入しておくと安心です。

【オフィス用防災セット】キングジム 災害帰宅セット KTS-100
価格(税込)5,184円
ケースのサイズA4サイズ(幅70×高304×奥220mm)
防災グッズ・ナップサック

・非常食(ライスクッキー8枚入×1)

・5年保存水500ml×2

・ホイッスル×1

・非常用ライト×1

・簡易トイレ×3

・軍手×1

・ウェットティッシュ×1

・ポケットティッシュ×1

・アルミポンチョ×1

買い足す防災グッズ

モバイルバッテリー、歯磨きシート、マスク、エアーマット

 緊急避難セット14点入 KEC-800|角利産業

大工道具などを販売する角利産業が販売する防災セットです。

A4サイズのケースの中に、持ち出し袋(ナップサック)、非常食、保存水など最低限必要な防災グッズが詰まっています。

ポンチョが入っているので雨の中でも濡れずに避難できます。

企業や官公庁が従業員用に購入することが多い防災セットですが、勤務先で自分用の防災セットが支給されない場合は、個人で備えておきましょう。

価格(税込)8,640円
ケースのサイズA4サイズ(約240×310×85mm)
防災グッズ・ナップサック(約幅390×高さ465mm、日本防炎協会認定品)

・非常食(缶入カンパン100g)

・5年保存水500ml×1

・LEDラジオライト(単四電池3本付)

・サバイバルシート

・ポンチョ

・IDホイッスル

・非常用給水バッグ5L

・すべり止め付軍手

・綿棒×4

・ポケットティッシュ×1

・ダストマスク

・ウエットティッシュ

・防災メモ

買い足す防災グッズ

モバイルバッテリー、簡易トイレ、歯磨きシート、マスク、エアーマット

まとめ

オフィスに備える防災セットは、帰宅困難時用と帰宅用があるので、間違えないようにしてください。

帰宅できるかどうかは災害が発生した後でないと分からないので、帰宅困難時用と帰宅用の2セットを備えるか、1セット購入して不足しているグッズを買い足しておきましょう。