- 防災ポーチの作り方
- 防災ポーチに入れて持ち歩くおすすめ防災グッズ15点
いつ起こるか分からない災害に備えるには、家庭に持ち出し用防災セットや備蓄品を備えるだけでは足りず、「防災グッズを持ち歩く」という0次の備えが必要です。
そして、持ち歩き用の防災グッズ(防災ポーチ)には、日常生活の負担にならないよう、災害発生直後に必要になる最低限の防災グッズを備えることになります。
この記事では、防災士の私が持ち歩いている防災ポーチの作り方と、厳選した防災グッズの中身を紹介します。
防災ポーチの作り方
防災ポーチを作るときに気を付けるポイントは、3つあります。
- 重さ
- 大きさ
- 厳選
重さ
防災ポーチは通勤や外出用のカバンに入れて常に持ち歩くので、重すぎると日常生活の負担になります。
いくら防災のためとは言え、毎日持ち歩くカバンの中に重たい防災ポーチを入れて持ち歩くのはしんどいですし、持ち歩くモチベーションも下がってしまいます。
「できるだけ日常生活を犠牲にしないこと」は防災の基本の一つなので、防災ポーチも持ち歩いても気にならない重さにしておくことが大切です。
具体的にいうと、200~300g程度が理想です。
重くても500g(500mlペットボトルが1本)までに絞り込みましょう。
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大きさ
防災ポーチが大きすぎると、普段使いのカバンに入らないことがあります。
防災グッズを詰めた状態でも、カバンに余裕をもって入るサイズにしておくことが大切です。
防災ポーチの形状は、普段使いのカバンの形状によって選びます。
ハンドバッグやトートバッグのように薄めのカバンを使っている場合は防災ポーチも薄さを重視します。
リュックサックを使用している場合は、薄さよりもコンパクトさを重視することが多いです。
厳選
いざ防災ポーチを作るとなると、色々な場面を想定して「あれもこれも」入れておきたくなります。
しかし、防災ポーチの重さや大きさには制限があるので、入る防災グッズも限られます。
災害発生直後に必要かどうかという基準で、備える防災グッズを厳選してください。
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防災士が防災ポーチに入れて持ち歩いている「おすすめの中身12点」
私が持ち歩いている防災ポーチの中身を紹介し、持ち歩いている理由を一つひとつ解説していきます。
防災士の私が持ち歩いている防災ポーチの中身リスト一覧
防災ポーチ | コンパクト、軽量 |
スマホ | 防災アプリやSNSインストール済 |
モバイルバッテリー | コンパクト、軽量 |
ラジオ | AM/FM(ワイドFM)対応 |
ホイッスル | 複数周波数、大音量 |
軍手 | ガレキ除去などを想定 |
スリッパ | 屋内で被災した場合を想定 |
ウェットティッシュ | ノンアルコール・無香料 |
簡易携帯トイレ | 1回分 |
マスク | 防塵マスク |
絆創膏 | 2枚 |
身分証明書のコピー | 顔写真付き |
防災ポーチ
防災ポーチ本体も大切な防災グッズです。
選ぶときのポイントは、「中身が見えること」です。
災害が発生したら、防災ポーチから必要な防災グッズを素早く取り出す必要があるので、中身が一目で分かるメッシュケースがおすすめです。
重さや大きさがちょうど良くても、中身が見えないと取り出すのに手間取り、「備えたのに使えなかった」ということになりかねません。
私は、モンベルのメッシュケースSを使用しています。
アウトドアブランドが販売する商品で、メッシュ素材で中身が見えるだけでなく、耐久性や取り出しやすさにも定評があります。
重さ40g、高さ14cm×幅19cm×奥行き6.5cmと防災ポーチにちょうど良いサイズです。
実は、女性に話を聞くと、「中身が見える防災ポーチには抵抗がある。」という意見が多数でした。
また、「中身が見えなくても、防災グッズが整理しやすいポーチなら問題ない。」という意見もありました。
スマホ
スマホは、最も重要な防災グッズと言っても過言ではないくらい災害時の必需品です。
災害発生時は電話がつながりにくくなりますが、ネットは比較的つながりやすいです。
契約キャリアの基地局が被害を受けても、00000JAPANなどの無料Wi-Fiサービスが提供される機会が増えており、ネット環境が長期にわたって断たれることはそれほど多くありません。
そのため、スマホさえあれば、SNSや防災アプリを使って家族の安否確認や災害情報の収集ができますし、ラジオ、ライト、地図などの機能も利用することができます。
常に持ち歩いている人が多いはずですが、災害への備えとして、防災アプリとSNSアプリのインストールは済ませておきましょう。
私は、以下のようなアプリをインストールして備えています。
普段使いしているアプリの中に災害時に役立つものもあるので、インストール済みのアプリの「防災アプリとしての使い方」も調べておくと防災力がアップします。
- Yahoo!防災速報:住んでいる地域の災害情報収集用
- ゆれくるコール:地震情報収集用
- 東京都防災アプリ:防災知識の確認用
- MySOS救命・救急 応急手当ガイド AEDマップ
- Twitter:災害関連情報収集用
- LINE:家族や友人との連絡用
- Facebook(Messenger):被災状況の伝達用(主に仕事)
アプリは、インストールするだけでなく実際に使ってみることが大切です。
平時から使い慣れておけば、災害時に迷わず必要な機能を使うことができます。
モバイルバッテリー
災害時に大活躍するスマホですが、使い続けるとあっという間にバッテリーがなくなってしまいます。
そもそも平時から頻繁に使うものなので、「災害発生時にバッテリーが切れていて使えなかった。」という被災者も多いです。
そのため、スマホ充電用のモバイルバッテリーは必ず備えておきましょう。
私は、次の基準で防災ポーチに入れるモバイルバッテリーを選びました。
- 出力(容量):10,000Ah以上
- 急速充電:可(2A以上)
- 大きさ:150×100mm以下
- 軽さ:200g以下
- 薄さ:20mm以下
- 同時充電:2台以上
- 安全対策:PSE認証あり
災害という緊急事態への備えとして、容量の大きさと急速充電は外せません。
10,000Ahあればスマホを2回はフル充電できますし、急速充電機能があればコンセントより早く充電が完了します。
防災ポーチの中に入るよう、できるだけ小さく、軽く、薄いモバイルバッテリーを選ぶことも大切です。
私はスマホを2台(仕事用と家庭用)を持ち歩いているので、2台同時充電できることも重視しました。
安全対策は、基本的にはPSE認証を基準にしています。
海外製の格安モバイルバッテリーには、PSE認証のない商品があります。
また、表示出力が大きくてもUSB出力に換算すると6~7割程度、実測するとさらに下がる商品もあるので、購入時には十分に注意してください。
ラジオ
ネット環境が断たれてスマホで災害情報が収集できない場合を想定し、念のためにラジオも備えておきます。
防災ポーチに備えるラジオで重視したポイントは次のとおりです。
- ワイドFMに対応
- 感度が高い
- 小さい
- 薄い
- 軽い
ワイドFMというのは、FMの電波でAM放送を聴くことができる機能です。
スマホが使用できない場合の最終手段なので、備えていたのに聴けないことがないよう感度が高いものを選びました。
モバイルバッテリーと同じく、小さく、軽く、軽いことも重要なポイントです。
中波とFMワイドの2バンドラジオなので、短波の受信はできません。
また、小さいので同調するのがやや難しく、高齢者だと厳しいかもしれません。
持ち出し用防災セットにはラジオライトを備えておくので、防災ポーチに入れておくのは簡易なラジオでも問題ありません。
ホイッスル
ホイッスルは、屋内に閉じ込められたり、がれきの下敷きになったり、思うように声を出せなかったりする場合に、周囲に助けを求めるための手段です。
キーホルダータイプと首からかけるタイプがありますが、おすすめは首からかけるタイプです。
災害直後に防災ポーチから取り出して首にかけておけば、SOSを出したいときにすぐ吹くことができるからです。
私は、防災ポーチから取り出す暇もない場合を想定し、防災ポーチではなく普段使いのリュックサックの網ポケットにホイッスルを入れています。
また、災害直後に現場入りする場合には、常に首からかけて行動するようにしています。
軍手
避難時には、ガレキや割れたガラスに触れたり、地面に手をついたりすることがあるので、手を守るために軍手を備えています。
阪神淡路大震災発生時、床に落ちたガラス片で手を切り、しばらくは痛みで箸やペンが持てず不便だったので、防刃仕様の軍手を常に持ち歩くようにしています。
スリッパ
地震発生時には、割れたガラスや照明器具の破片が床に散らばることがあります。
そんな中を裸足で歩くと足の裏にケガをして、避難行動や避難後の生活に影響が出てしまいます。
スリッパがあれば、屋内でも安全に移動することができます。
仕事柄、屋内で過ごすことも多いので、防災ポーチにはスリッパを入れて持ち歩くようにしています。
使い捨てスリッパでもないよりは良いのですが、備えるなら底が厚く、ケガのリスクが少ないスリッパがおすすめです。
スリッパを備えるのと同時に、窓ガラスに飛散防止フィルムを貼り付けておくとより安心です。
ウェットティッシュ(体ふきシート)
顔や体を拭く、食事前やトイレ後に手を拭く、汚れた持ち物を拭くなど何かと便利なので、小さめのウェットティッシュを備えています。
ティッシュを備える人もいますが、備える目的が違うので、ウェットティッシュの代わりにはなりません。
ノンアルコール・無香料のウェットティッシュがおすすめです。
簡易携帯トイレ
災害が発生すると断水してトイレが使えなくなることがありますし、被災した場所にトイレがない可能性もあるので、簡易携帯トイレも防災ポーチに入れておくと安心です。
入れすぎるとかさばるので、1~2回分を備えておきましょう。
簡易携帯トイレを使うときに気になるのはニオイです。
私は以前、被災地で被災者から勧められた「BOS非常用トイレセット」が驚くほど臭わなかったので、常備しています。
マスク
災害発生時には、粉塵、煙、火山灰、ガス、ホコリなど体に悪影響を与える物質が発生するので、有害物質の吸い込みを予防するマスクは必需品です。
私は呼吸器系が弱いので、防塵マスクを備えています。
通常のマスクでも吸い込み予防にはなりますが、より効果の高い防塵マスクがおすすめです。
女性の場合、すっぴんを隠すためにマスクを備える人も多いです。
絆創膏
応急処置用に絆創膏を2枚備えています。
災害発生時は、ガラスやガレキ、木の枝などに触れて切り傷ができることが多いので、2~3枚は備えておくと安心です。
また、走って避難したことで靴ズレが起こることもあります。
特に、女性は、ハイヒールを履いて走ると靴ズレが起こりやすいです。
そのままだと歩いて避難できないほどの痛みがありますが、絆創膏を貼ると痛みが和らぎます。
身分証明書のコピー
備え忘れが多いのが顔写真付きの身分証明書です。
身元確認のために必要ですし、大規模災害発生時には、身分証明書の提示で預貯金が引き出せる特例措置が実施されることもあります。
「運転免許証が財布の中にあるから大丈夫」と思うかもしれませんが、万が一のことを考えてコピーを備えておきましょう。
生理用品(女性)
女性の場合、生理用品も1~2つは備えておくと安心です。
特に、生理中以外はナプキンなどをカバンに入れておかないという人は、防災ポーチには必ず備えておきましょう。
女性用の防災グッズとおすすめの防災セットについては、別の記事で詳しく解説しています。
防災ポーチ用の防災セットのおすすめ
一つひとつ揃えるのが大変なら、防災ポーチ用のセットを購入して、必要なグッズだけ買い足す方法もあります。
私が防災講義でおすすめしているのは、災害イツモ常時携行パック2とエマージェンシーキットです。
仕事が忙しく時間をかけずに防災ポーチを備えたい人にはおすすめです。
ただし、防災ポーチの中身が全て揃うわけではないので、購入後に買い足したい防災グッズについても書いておきます。
災害イツモ 常時携行パック2
- ヘッドライト
- カード型ラジオ
- ホイッスル
- 薄型ブランケット
- ウェットティッシュ
- 自立式携帯トイレ
- 大判ハンカチ
- 防災マニュアル&緊急ガイド
- 説明書&ヒント集
モバイルバッテリー、軍手、スリッパ、ウェットティッシュ、絆創膏、(マスク)
エマージェンシーキット
- 収納ポーチ
- キーライト
- IDホイッスル&カラビナリング
- アルミブランケット
- 軍手
- 携帯トイレ
- FMラジオ
- ウェットティッシュ
- レインコート
- 綿棒&絆創膏
- 防災の心得
モバイルバッテリー、スリッパ、ウェットティッシュ、ラジオ用電池、マスク
まとめ
災害大国の日本に住んでいる以上、いつ・どこで・どんな災害に巻き込まれるか分かりません。
家庭に持ち出し用防災セットや備蓄品を備えるのと同時に、外出先で被災した場合を想定して防災ポーチを準備し、「防災グッズを持ち歩く」という習慣をつけておきましょう。
「家に帰れば、持ち出し用や備蓄用の防災セットがあるから、防災ポーチの中身は簡易で良い。」という人もいますが、災害発生時に家に帰れる保証はありません。
災害の影響で公共交通機関が停止したり、道路が寸断されたりする可能性がありますし、出張中や旅行中に被災する可能性だってあります。
東日本大震災では、津波や原発事故の影響で、多くの人が自宅に帰ることができないまま長期間の避難生活を送ることを余儀なくされました。
「家に帰ることができる」という前提は、災害発生時には根底から崩れる可能性があるのです。
持ち出し用や備蓄用と比べると簡易になるにしても、どこで被災しても命を守ることができるだけの防災グッズは入れておくようにしてください。
最近は防災ブームなので、「おしゃれな防災グッズ」や「100均で揃える防災ポーチ」という記事をよく見かけます。
防災に興味関心を持つ人を増やすという意味では効果があるかもしれませんが、おしゃれや安さを重視した防災グッズに命を守れるだろうかという視点は持つ必要があると思います。
また、防災ポーチには被災時に「きちんと備えているから大丈夫」と思える精神安定剤としての効果もありますが、おしゃれや安さを重視して防災ポーチで安心できるかどうかも考えるべきです。
防災ポーチの備え方は人それぞれですが、防災に携わる者としては、命を守るという視点から備えてほしいと思います。