- 調節池とは何か
- 調節池・調整池・遊水地・雨水貯留施設の違い
日本では、昔から各地で大雨に伴う洪水が発生して大きな被害を受けてきました。
そして、被害を受けるたびに治水の技術が向上してノウハウも蓄積され、洪水を予防したり被害を最小限に抑えたりする施設が考えだされてきました。
調節池や雨水貯留施設は、洪水から人や街を守る施設として全国各地で整備され、実際に大雨・豪雨時などに洪水対策として機能しています。
この記事では、調節池とはどのような施設か、調整池・遊水地・雨水貯留施設との違いについて解説します。
調節池とは
調節池とは、集中豪雨などで急激に水量が増加した場合に、河川が氾濫しないよう、河川の流下能力を超えるおそれのある洪水を一時的に溜めておき、後ほど徐々に放水するための施設です。
簡単にいうと、「河川が氾濫しないように一時的に洪水を溜めておく池」です。
出典:調節池|東京都建設局
調節池に洪水を流入させることで、下流の水位を低下させて水害の軽減を図るという治水を目的として、河川管理者が恒久施設として設置します。
調節池に溜め置かれた水は、下流地域への影響を考慮しながら徐々に排水されます。
なお、調節池という名称でなくても、ダムなどによる人工湖も調節池と同じような役割を果たしています。
調節池の構造と設置場所
調節池は、危険水量に達した場合の河川の水面よりも低い低地を掘って窪地にし、コンクリートで固めて造られるのが一般的です。
しかし、地上に設置する場所がない場合などは、地下にトンネル型や箱型の調節池が作られることもあります。
また、調節池は、設置場所によってオンサイト式とオフサイト式に分類されます。
調節池の分類 | 貯留方法 |
オフサイト式 | 降水地域から離れた場所に貯留する(河川や放水路から調節池へ水を流す) |
オンサイト式 | 降水地域の近くで貯留する(降水地域周辺の運動場や駐車場の地下など) |
住宅密集地などでは、調節池として使用しない平時には公園、運動場、駐車場などとして使用されることもあります。
調節池が設置される場所
氾濫が起こりやすい場所や、土地開発で森林や農地が失われて雨水浸透能力が低下した場所などに設定されます。
なお、土地開発時に一時的に設置される場合は「調整池」と呼ばれます。
調節池と調整池の違い
調整池とは、土地の開発者などが、住宅や工業団地などを開発するにあたり、雨水や排水を溜めておくために設置する施設です。
雨水などを溜めておく池であることは調節池と同じです。
しかし、調節池が、河川管理者が恒久施設として設置されるのに対し、調整池は、土地開発者などが暫定的に施設するところが違います。
調整池や調節池でネット検索すると両者の意味を誤解した記事が表示されるので、注意が必要です。
調節池と遊水地
遊水地とは、洪水発生時、河川の流水を一時的に流入させて溜めておく土地です。
通常は、河川に隣接した低地に水門などを設けて遊水地とし、そこに水を溜めることで下流の水位を低下させて水害の軽減を図ります。
目的や機能は調節池と同じですが、深さが違います(調節池の方が遊水地よりも深い)。
雨水貯留施設とは
雨水貯留施設とは、雨水を一時的に溜めておき、下水道や河川への流出量を抑える施設です。
水は、以下のように自然界の中で循環する仕組みができていました。
- 雨が降る
- 雨水の一部は蒸発し、一部は地表を流れ、残りは地中に浸透して地下水になる
- 地表を流れた水は、地下水道などを通って河川へ流れ、海へと流れる
- 地下水は、河川や海、地下水層へ流れる
しかし、土地開発が進んで農地や森林がアスファルトの道路やコンクリートの建物にとって代わり、雨水が地中に浸透する土地の面積が急激に減少しました。
つまり、雨水の3つの道のうち、「地中」という道が狭くなってしまったのです。
その結果、大雨が降ると、短時間のうちに下水道や河川に大量の水が排出されて雨水処理能力が追いつかなくなり、大規模な浸水被害が発生するようになりました。
都市型水害や内水氾濫と呼ばれる現象で、近年、都市部に集中豪雨が降って深刻な浸水被害が発生したというニュースが頻繁に報道されています。
こうした浸水被害を防ぐために設置されるのが、雨水貯留施設です。
雨水貯留施設には、地上に設置するタイプと地下に設置するタイプがあります。
調節池も雨水貯留施設の一つです。
雨水貯留施設の主な種類は、以下のとおりです。
- 調節池
- 調整池
- 遊水地
- ビルや住宅の地下の貯留施設(地下貯留槽、雨水貯留施設など)
- 流域貯留施設(公園貯留、駐車場貯留、校庭貯留など)
雨水浸透施設
雨水浸透施設とは、雨水を浸透させて貯留し、下水道や河川への流出を抑える施設です。
雨水貯留施設とあわせて雨水貯留浸透施設とも呼ばれます。
雨水による浸水害を抑えるだけでなく、地下水の涵養にも効果があると考えられており、全国で設置されるようになっています。
主な雨水浸透施設は、以下のとおりです。
- 浸透トレンチ
- 浸透側溝
- 雨水浸透ます
- 透水性のアスファルト舗装など
まとめ
調節池は、洪水から町を守るために大切な役割をはたしています。
近年は、毎年のように大雨・豪雨の影響で内水氾濫や外水氾濫(河川氾濫)が発生しており、調節池などの治水施設の重要性が増しています。
【参考】