- 余震とはどのような現象か
- 余震に備える方法
大きな地震(本震)が発生した後、ニュースで「引き続き大きな地震(余震)に警戒し、今後の情報にご注意ください。」と呼びかけているのを聞いたことがあるでしょう。
大きな地震が発生した場所やその周辺では、本震に引き続いて余震が発生することが多いからです。
しかし、余震の意味やリスクを正しく理解していないと、「どのように警戒するのか」も「いつまで警戒するのか」も分からず、適切な備えができません。
そこで、この記事では、余震とはどのような現象か、前震・本震・余震の違い、余震の回数・期間・範囲、余震に備える方法について解説します。
余震とは
余震とは、大きな地震に引き続いて発生する地震です。
一連の地震活動において大きな地震が発生した後に、同じ地域または周辺の地域で発生します。
震源が浅く規模(マグニチュード)が大きい地震の後には高い確率で余震が発生し、規模が大きいほど回数が多く、発生地域も広くなる傾向があります。
前震・本震・余震の違い
ある地域において、一定期間に連続して発生した地震活動は、最大規模の地震を基準として、前震、本震、余震に分類されます。
地震の種類 | 説明 |
前震 | 本震の前に発生する地震 |
本震 | 一連の地震活動で最大規模の地震 |
余震 | 本震の後に発生する地震 |
本震の後に、本震とは異なる地域で大きな地震や地殻変動が発生することがあります。
本震の振動の伝播や地盤の歪みの変化によって発生する余効変動や誘発地震という現象で、余震とは区別されています。
余効変動 | 地震の後に観測される地殻変動 大きな地震の後、徐々に地殻変動の速度を減少させる遷移的な変動など |
誘発地震 | 大きな地震に誘発され、震源域から離れた場所で発生する地震 |
余震の規模:本震より小さいとは限らない
「余震」という言葉から、「最初の大きな地震(本震)よりも規模の大きな地震は発生しない」と思っている人は少なくありません。
しかし実際は、本震が発生した後、それと同じレベルの揺れを生じさせる規模の地震が発生するケースもあります。
代表的な例が、2016年に発生した熊本地震です。
気象庁は、4月14日に発生した大きな地震(M6.5)を本震とみなし、「今後3日間に震度6弱以上の余震が起きる可能性は20%」という余震確率を公表しました。
しかし、2日後の16日、本震とみなされた地震を超えるM7.3の大きな地震が発生し、時間の経過とともに地震活動域が拡がりました。
そして、「余震が起きる可能性は20%」を「危険性が低い」と判断して自宅避難を続けた人が死亡したことなどで、余震という表現が被害拡大の原因になったという批判が上がりました。
こうした教訓を踏まえ、気象庁は、2016年8月19日から、誤解を与える「余震」という言葉は使用せず、「地震」という言葉を使用する運用を開始しています。
具体的には、「震度5強以上となる地震の発生確率は平常時の30倍」などと発表されるようになりました。
気象庁は、2016年8月19日以前は、最初の大きな地震がM6.4以上であれば本震とみなし、その後は本震より大きな地震が起きないことを前提として、余震の発生確率を発表していました。
M6.4以上という規模は、1926年から1995年に発生したM5.5以上の内陸直下型地震153ケースを分析した結果に基づくものです。
余震の回数・期間と範囲
地震の規模が大きいほど余震の回数は多くなり、余震が続く期間も長くなります。
余震の回数 | 10回程度~10,000回程度 |
余震の期間 | 数日程度~年単位 |
例えば、東日本大震災では、体感する余震が10,000回を超えました。
余震の多くは、本震発生直後から1週間程度、特に2~3日の間に発生し、時間の経過とともにある程度の規則性をもって減少していきます。
本震から2日後に約2分の1、10日後に約10分の1、100日後に約100分の1になるというのが一応の目安です。
余震の範囲は、地震が大きいほど広範囲にわたります。
余震はいつまで警戒するか
最大震度5弱以上などの大きな地震の発生から1~2時間すると、気象庁から、以下のような地震活動の見通しや防災上の注意点が発表されます。
- 1週間程度は、最初の大地震の規模と同程度の地震に注意することが基本です。
- 特に、地震発生後2~3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くあります。
- 付近に活断層がある、過去に同程度の規模の地震が続いて発生したことがあるなど、その地域の特徴に応じた呼びかけが発表された場合は、それにも留意してください。
- 最初の地震の強い揺れにより、落石や崖崩れなどが起こりやすくなっている可能性があります。震度6弱など特に強い揺れのあった場合は、これらに加え、家屋の倒壊や土砂災害などの危険性も高まっているおそれがあります。もう強い揺れを伴う地震は起きないとは決して思わず、その後の地震活動や降雨の状況に十分注意し、やむを得ない事情が無い限り危険な場所には立ち入らないなど、身の安全を守る行動を心がけてください。
この発表を踏まえると、少なくとも1週間程度は、余震に対して十分な警戒をする必要があります。
1週間程度経っても大きな余震が起こらず、気象庁からも特段の発表がなければ警戒は緩めますが、地震が発生したらすぐ避難行動ができるようにはしておきましょう。
「今後、余震の心配はありません」という発表はありません。
余震による二次災害
余震による二次災害には、以下のようなものがあります。
- 本震の揺れによって耐久力が低下した建物が、余震の揺れで倒壊・損壊する
- 余震に伴って津波が発生する
- 余震が続くことで地震酔いになる
- 余震に対する不安や心配から不眠症、食欲不振、情緒不安定などの症状が出る
東日本大震災では、余震で震度6弱以上の揺れや津波が発生しました。
また、余震は本震で強い恐怖を感じた後に起こる上、いつ起こるか分からず、長く続く(終わりが分からない)ので、時間の経過とともにストレスを募らせる人が増えていきます。
余震に備える方法
余震への対応は、まず、本震の揺れによる周辺の変化を確認し、安全が確認できたら余震による被害を抑える備えを始めるのが基本です。
自宅の被害状況を確認
自宅で被災した場合、以下の項目に沿って、地震の揺れによって自宅が受けた被害を確認します。
- 外から見たときに自宅が傾いていないか
- 室内が傾いていないか(ビー玉などを転がしてみる)
- 壁面や基礎に亀裂がないか
- 窓ガラスが割れたり、ドアがずれたりしていないか
- 屋根瓦やソーラーパネルが落下していないか
- 電気・ガス・水道が使用できるか
- 雨漏りしていないか
どれか一つでも当てはまる項目がある場合、自宅避難はリスクが高いので避け、近くの避難所に避難してください。
「建っているんだから大丈夫。」と思うかもしれませんが、本震に耐えたとしても、余震が来ると倒壊するおそれがあります。
特に、1981年6月1日以前に建築確認申請を受けた建物の場合、現在の耐震基準よりも甘い旧耐震基準に基づいて建築されているので、余震で倒壊または損壊するリスクが高いと言えます。
なお、屋根の上を確認するときは、転落しないように高所作業用の道具を揃えて複数人で対応しましょう。
残念ながら、災害が発生するたびに火事場泥棒による被害が出ます。
自宅から避難する場合は、戸締りを忘れないようにしましょう。
通電火災の発生を防ぐため、避難するときは必ずブレーカーを落としてください。
災害という異常事態でブレーカーを落とし忘れる不安がある人は、感震ブレーカーを購入して取り付けておくことをおすすめします。
通電火災の危険性と感震ブレーカーについては、別の記事で詳しく解説しています。
室内の安全対策
自宅避難ができる場合は、室内の安全対策をして余震に備えます。
- 安全スペースと避難経路を塞がないように家具を配置する
- 地震の揺れの影響で転倒・落下・移動の可能性がある家具は固定する
- キャスター付きの家具はキャスター下皿に乗せる
- 戸棚や本棚のトビラには開閉防止器具を取り付ける(または中身を出す)
- 窓ガラスにガラス飛散防止フィルムを貼る
- 真夜中の地震に備えて保安灯を設置する
- 初期消火の準備をする
室内の安全対策については、別の記事で詳しく解説しています。
自宅避難中の過ごし方
余震はいつ発生するか分からないので、自宅避難中の過ごし方にも気を遣うことが大切です。
- 吊り下げ型照明器具の真下に座ったり寝たりしない
- 転倒・落下・移動のおそれがある家具から離れておく
- 窓ガラスから離れておく
- 手の届く場所に持ち出し用防災セットを置いておく
- 家の中のドアを全て開けておく
災害情報の確認
災害の被害を最小限に抑えるには、正しい情報を早く入手することが欠かせません。
本震の後も災害情報をこまめに確認し、余震が発生した場合に備えましょう。
おすすめは、防災アプリを使用した情報収集です。
テレビやラジオでも情報収集は可能ですが、本震による被害が大きかった地域の情報が多くなるので、必ずしも自分や家族が住んでいる地域の情報が手に入るとは限りません。
防災アプリには、登録した地域に特化した情報をピンポイントでプッシュ通知してくれるものがあり、インストールして設定しておけば、知りたい地域の情報を自動かつ迅速に入手できます。
私が地震情報を入手するために使っている防災アプリは、以下のとおりです。
- Yahoo!防災速報
- わが家の防災ナビ
- ゆれくるコール
おすすめの防災アプリについては、別の記事で詳しく解説しています。
Twitterはデマや誤報に注意
防災アプリではありませんが、Twitterアプリも災害時に役立ちます。
Twitter公式サイトには、災害時のTwitter活用法が6つ示されています。
- 援助ツイート
- #減災ツイート
- 災害関連アカウントのフォロー
- 公式リストの保存
- Twitterモーメントをフォロー
- ツイート(安否確認など)
注意したいのは、Twitterの情報にはデマが混ざっていることです。
地震の場合、「〇月〇日〇〇時〇〇分に再び大きな地震が発生する」、「何年間にもわたって余震が続く」といった、根拠のないデマが飛び交います。
目を引きやすく、不安を煽るデマがリツイートなどで拡散され、多くの被災者の目に留まってしまう事態が発生しています。
Twitterで情報収集するときは、情報の発信元を確認するとともに、公的機関の情報と照らし合わせてみることが重要です。
避難場所と避難経路の確認
本震後は自宅避難ができていたとしても、余震によって自宅が倒壊・損壊し、避難を余儀なくされる場合に備え、避難場所と避難経路を確認しておきます。
家族全員が同じ場所で被災するとは限らないので、情報を家族で共有しておくことも大切です。
防災セットの確認
余震によって避難を余儀なくされた場合に備え、防災セットの中身を確認し、手の届く場所に置いておきます。
持ち出したいのは、持ち歩き用防災セット(防災ポーチ)と持ち出し用防災セットです。
種類 | 内容 | 詳細記事へのリンク |
持ち歩き用 | ・日頃から常に持ち歩く防災セット(防災ポーチ)・災害発生直後に身を守るための備え | 防災ポーチ |
持ち出し用 | ・避難時に持ち出す防災セット・避難時や災害発生後1日間のための備え | 防災セット |
重さを確認
持ち出し用防災セットについては、持ち出せる重さかどうかも確認しておきます。
防災セットを備えたときにも確認したはずですが、備えてから時間が経過したり、体調を崩したりした場合、持ち運ぶのがしんどくなっている可能性があります。
また、男性が1人で家族全員分の防災セットを備えていた場合、女性や子供にとっては重すぎることも珍しくありません。
使用者が事前に持ってみて、重いようなら中身を調節してください。
まとめ
大きな地震(本震)が発生して揺れが収まったとしても、1週間程度は余震が発生する可能性があります。
余震という名称から受ける印象とは異なり、本震と同じまたはそれ以上の揺れを生じさせる規模の地震が発生することもあるので、いつ余震が起こっても適切かつ迅速に対応できるように備えておきましょう。
防災セットの確認、自宅の被害状況の確認、屋内の安全対策などやるべきことはたくさんありますが、自分と家族の命を守るという視点で優先順位を決め、取り組んでください。